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そうして遂に星宮家に行く時が来た。
鏡で上から下まで自分を見た。
燕尾服を着るのは初めてだった。こんなに気が締まる服だと思わなかった。
これを着れば大人味のあるかっこいい執事なれると思っていたが、いざ着てみると燕尾服が着せられたマネキンのようで、自分の顔がのっぺらぼうに見えた。
まったく似合ってない。この状態で行くのか。
朝から落ち込みながら家を出た。
数分して星宮家に着いた。
恐る恐る星宮家の門をくぐると、
綺麗に丸く整えられた木々。
鮮やかに咲く薔薇や沢山の花、中央にある噴水。
幼い頃と変わらない状態でほっとした。
確かこの近くに幼い日に遊んだブランコがあったはず。
俺は360度辺りを見た。
だけどブランコは無かった。取り壊されたのだろうか。自分と関わりのあった物が無くなっているのはもしかしたらあの父親のせいかもしれない。
そんなことを考えながら屋敷の前まで歩くと、60歳くらいだろうか、白髪でメガネを掛けたタキシード姿の男の人が立っていた。
その人は俺に向かってお辞儀をした。こんなに敬意が分かるお辞儀は初めてだ。
「永瀬廉様でよろしいでしょうか？」
「は、はい」
柔らかな話し方で、微笑んでいるこの男の人は案内人らしい。
「まず、ご説明を致しますのでこちらへ。」
そう言って、最初に連れてこられたのは客室だった。
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作者名：薄 | 作成日時：2022年11月19日 0時
