天色の魔女(S.Ryuto) (ページ14)

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Youside

なんでこの人にこんな事言ってしまったのだろう。

ましてや昨日少し話したくらいの人に。

本が好きか聞いていただけだから好きとただ答えれば良かったのに私は何故か余計な事まで言ってしまった。

まったくは親しくない人に言うなんて、私は可哀想な人間だと遠回しに言ってる気がして嫌だった。

目の前にいる彼は複雑な顔をしていた。

「ご、ごめんなさい。気にしないでください。」

私は彼に背を向けた。もうこれ以上関わらないようにしようと思った。その方が彼のためにもなる。

助けて、なんて言えない。

「あの」

しばらく黙っていた彼が声を上げた。ただまっすぐな声だった。

私は振り返らず、何も言わず彼の言葉を待った。

なにを言われても構わない。いつものことだ。

だが彼が放った言葉は私の予想の真逆の事だった。

「ここにいるなら、また来てもいいですか」

何故？

彼の言ってる事が分からない。

「貴女はそんな思いを抱えてここにいるんですよね。嘘の噂で貴女がここにほぼ閉じ込められている状態って俺は嫌です。

俺は貴女に助けられました。だから…」

「俺も貴女を助けたい」

その言葉が聞こえた瞬間、心の底にあるもやもやが全て吹き飛んだ感覚がした。

誰かに言えたら、誰かから言われたかった。そうずっと思っていた。だけど「助けて」なんて言えるわけなくてずっと閉じ込めていた。

私は振り返り、彼の顔を見た。

いいんだろうか、この人を頼ってしまって。

私に関わって彼が嫌な思いをしないだろうか。

「……本当に？」

怖くなって私は彼から顔を背けた。

「はい。」

そう言った彼の顔を少し見ると、ふわりと微笑んでいた。