2-16 ページ35
「来生、浬…。」
「星野…。」
2人がここにいるということは、神田さんも…。
沈黙が流れていると、空から白くヒラヒラとしたものが降ってきた。
「雪……。」
「あぁ…。…冬の方が好きだって言ってたよな、みのり。」
「えぇ…それにあの日も…。」
研修医として日浦総合病院に入って、初めて担当した患者さんが亡くなった。
その時も、私たち4人はここにいて。
そしてその日は…季節外れな雪が降っていた。
「"泣かないで浬。私たちは、立ち止まってる暇はないの。"」
あの日、みのりが浬に言った言葉。
私は浬の隣に座り、彼の目を見てそう言った。
浬は少し目を開き、私を見つめる。
「みのりはさ…強かった。」
明るくて、いつも毎日が楽しいって言ってて、強くて、可愛くて。
佐倉さんにも、春野さんにも似ているのかもしれない。
佐倉さんも春野さんも"さくら"という名前で繋がりがある…そしてみのりはその桜の蕾、とか。
「だからこそ人間の儚さを知った。」
「星野…。」
来生が私の顔を見て寂しそうに笑う。
…それもそうだ、私の頬は暖かくなっているのだから。
視界も歪み、前が見えない。
「…でも、ここで弱音吐いてちゃダメだね。」
手で目元をグッと擦り、口角を上げる。
「戻ろうか。」
次の日。
患者さんが一日で2人も減った。
心のモヤを抱えているのは私達だけで、世界は何も変化なく目まぐるしく回っている。
「…これ……。」
ナースステーションへ行くと、佐倉さんが沼津さんに呼ばれて面会に行っているようだった。
さっきまで佐倉さんが座っていたパソコンの前まで行く。
そこには、手帳に神田さんの情報がビッシリと書かれていた。
"神田光喜さん 男性 24歳"
"実家は北海道"
"入院日:2020年1月4日"
"太陽と海が好き じゃなかった… "
"白物家電売り場 炊飯器をオススメしてくれる!!"
基本的な個人情報や入院日、病名だけでなく食事量や仕事まで書かれてある。
佐倉さん、神田さんと相当距離が近かったんだろうな…。
ノートを手に持ち見ていると、肩を叩かれた。
振り向くと、そこには浬が。
「呼んでる人がいる。」
「…分かった。」
ノートを浬に預け、ナースステーション前でキョロキョロしている学生たちの元へと向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 865人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あい - 苗字もかえられたらなぁ、、 (2020年2月19日 10時) (
レス) id: c1027a2b46 (このIDを非表示/違反報告)
かの(プロフ) - 紗奈さん» ごめんなさい、恐らくバグだと思います…。私の方でも時々表示されません…。何度か2-10をタップして頂けると表示されると思います…！更新頑張ります^^* (2020年2月13日 9時) (レス) id: 387ee06ba6 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈(プロフ) - 2-10が公開されてないんですけど私だけでしょうか？いつも楽しく読ませていただいてます。これからも頑張ってください!! (2020年2月13日 2時) (レス) id: 7ed4c7ed68 (このIDを非表示/違反報告)
かの(プロフ) - かなたさん» ありがとうございます…！甘えてる天堂先生、あのドSっぷりからは想像できませんね…。笑 更新頑張ります！ (2020年2月11日 23時) (レス) id: 387ee06ba6 (このIDを非表示/違反報告)
かなた(プロフ) - ぁぁぁぁ！！好きです！浬がすんごく格好良い！！今寝ちゃってるけど、酔ってる状態で一回起きて星野ちゃんに甘えてほしい！！とか思っちゃいます(おい)更新頑張ってくださいね！ (2020年2月11日 21時) (レス) id: 62bfdae21e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かの x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2020年2月9日 0時
