君、護、月になる。

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帰宅して、シャワーを浴びる。



冷蔵庫にビッシリと詰められた
ミネラルウォーターを一本取って、流し込む。





ソファに座って、本日何度目かの溜め息を吐く。


タマが提案して来た原宿の店の
店舗概要を眺める。


紙の余白の彼方此方にタマのメモ書きが
残してあった。


正直、今日のタマの提案は
彼の成長を感じた。




それに変わって俺って、何１つ進歩してないし
叶いもしない恋に焦がれてただただ時間だけが過ぎていく。




俺だけ1人、置いていかれている気がした。




タマが提示してきたこの店は
都内には何店舗か展開しているようで
資本金も企業全体の年収もなかなかだ。





でも、俺が恋い焦がれている彼の店は
あのカフェの目の前、一店舗しかない。



企業が齎らす社会への影響力は小さい。
一店舗だけという規模の小ささも、採用されない
理由には最適になってしまう。



もし採用されたとして、何か大きなイベントを
仕掛けなければならないとなると、多額の資金も必要になる。




とてもあの店には、それだけの金があるとは思えない。








ーピンポーン






藤「え、こんな時間に誰だろ.....」





未だ濡れている髪の毛はそのまま
裸足のまま玄関へ。




藤「どちら様でしょうか？」



ー夜分遅くにすみません、お時間いいですか？





控えめなその声は、宝石店の彼への
理想の声だった。





藤「はい.....へっ！？」



ーあ、すみません.....先日704号室に越して来た.....








胸がぎゅっと苦しくなって、高鳴って。





叶いもしないと思っていた恋心が









ー 北山って言います。










歩き出した瞬間だった。

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