前提 ページ1
「無個性、って聞いてどう思います？ 時代遅れとか、社会のはみ出し者とか、無能とか。色々あると思うんですよ。でも個性は『個性』であって、無個性も『個性』であるべきだと僕は常々思うんです。『個性』に優劣なんて付けてはいけない、と。」
それを聞いている2人は呆気にとられている。
路上で捕らえたスリの事情聴取の筈だった。
被害者が被害届を出さず、少年が盗った財布を返し反省しているのなら厳重注意に留めよう、と話していた所だった。
「なのに最近は、優秀な個性であればあるほど良いなんて風潮がある。個性婚なんて言葉もあるぐらい。実に不愉快だ」
2人のうち1人が、個性婚という単語に反応し、顔をしかめる。
「もし、優秀な個性があっただけで偉い人なら、僕たち『無個性』は要らないじゃないか！」
2人のうち1人が、無個性という言葉に目を見開く。
「無個性に生きる価値が無いと言うなら、無個性に生まれた瞬間、殺せばいいんだ。それを『人を殺すのは倫理に反する』なんて偉い人が言うものだから、蔑みの目で見られながら惨めに生きなきゃいけない。そんなの同じ人間と言えますか？ そんな生き方に耐えられますか？」
少年の自論を、2人のヒーローは黙って聞いている。
それはこのスリの話し方に、持たざる者の嘆きも、持つ者に対する非難も含まれていなかったからだ。不思議でたまらない事に、この少年は卑屈になってる訳じゃない。スリとして捕まってるのに堂々とした態度。
全てがちぐはぐなこの少年を、かつて個性に悩まされた2人のヒーローは複雑な気持ちで見つめる。
「だから、俺たちは世界を変える。ヒーローだって変えられない世界を、俺は変えてみせる！」
そう断言した少年の横を、バイクがゆっくり通り過ぎる。
その瞬間、少年は油断したヒーロー達を振り払い、そのバイクに飛び乗り、引き離す。
慌てて対象のバイクを凍らせようと試みるが、交通量が多いことと、もしかすると元々のバイクの持ち主が一般人かもしれない事を考えると、迂闊に『氷結』させる訳にはいかなかった。
「轟くん、見逃そうよ」
「緑谷。でも」
「これ見て」
そう言って見せられたヒーロー・デクの手には財布が握られていた。
「…被害者の物か。俺達から逃げたのは、財布を持ち逃げする為じゃなかったのか」
「そうみたい」
不可解な出来事に顔をしかめるヒーロー・ショートと苦笑いするデクは、少年が逃げて行った方を見遣る。
「また会えるかな、彼」
デクはそう呟いた。
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音無春奈(プロフ) - 大好きです！主人公とジェイソンの手際がいい笑、ストーリー性もどストライク!!これからも応援してます！！ (2018年3月18日 18時) (
レス) id: 7d75b6b206 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ - 主人公の考え方がすごく好きです。いや、もちろん犯罪はだめですけど（笑）更新頑張ってください！ (2017年8月13日 19時) (レス) id: 5352f2a595 (このIDを非表示/違反報告)
水彩(プロフ) - ロフさん» 本当ですね、すみません！ ご指摘、ありがとうございますm(_ _)m (2017年7月16日 18時) (レス) id: 39230931c8 (このIDを非表示/違反報告)
ロフ - こんにちは。突然すみません。オリジナルフラグを外し忘れていませんか？ (2017年7月16日 18時) (レス) id: afc5de7b10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まあじ | 作成日時：2017年7月16日 17時
