シャチとイルカの共演8 ページ44
私は辞表を持って探偵社に赴いた。
「社長、今までお世話になりました」
深く一礼すると、社長は眉を顰めて「なぜだ」と言った。
「働く理由がなくなりました。人を助ける理由も。……俺は小説家になりたかったんです。銃を置いてペンを取り、いつか平和な世界で人を描きたかった。……でも、それももう過去のことだ」
ごめんね織田作。君の人生、終わってしまうかもしれない。
子供達が殺されたのだから、織田作之助ならジイドの元に行かなければならない。
でも、いいよね。だって私が“織田作之助”なんだから。
「織田作、待て、行くな」
メガネをかけた乱歩さんにそう言われる。
私は足を止めない。
「行くな織田作! 行ったら君、……死ぬよ?」
私は少し立ち止まり、「知っている」と答えて、またすぐ歩き出した。
乱歩さんなら分かってるだろう。そんな言葉じゃ私は止められないという事ぐらい。
・
銃を持ち、ミミック兵を殺す。
殺す毎に思考はクリアに、感覚は鋭く尖っていく。
復讐は何も生まない。だが、やる側にだけは意味のある行為だ。
感情が少しずつ落ち着いてくる。暴力的なまでにひしめいていた感情がシャープに一つにまとまっていく。
ああ、この感情をなんと呼べば良いのだろうか。
残念ながら、学がない私では言い表せない。小説家になろうと思っていた織田作ならば、この感情を文字に表せるのだろうか。わからない。
分からないままだ。きっと、永遠に、分かる日は来ないだろう。
だってもうすぐ死ぬのだから。
「待ちくたびれたぞ、サクノスケ」
「悪かったな。今日はとことん付き合ってやる」
ジイドと対面する。
私はジイドを殺したい。ジイドは私に殺されたい。
ならば大人しく殺されればいいのだが、ジイドは闘争の末に死にたいというのだ。
俺はそんなものに興味はないというのに。
だが、殺し合いをしているにしてはお互いに随分と気分が凪いでいた。
今回俺はポートマフィアではないが、ポートマフィアの増援が来た。太宰の仕業だろうか。
だが、無残にも撃ち殺され、俺もまたミミック兵を一人残らず撃ち殺した。
そしてジイドに銃を向ける。
特異点が広がって、1秒が引き延ばされる。
お互いの事を語り合い、私たちは旧知の友のように、互いを知り尽くしていた。
「出会い方さえ違えば、お前とは、友達になれた気がするよ」
「乃公もそう思う。……最後まで見事な弾丸だ。子供達によろしくな」
そうして私たちはお互いを正確に撃ち殺した。
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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時