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水族館のシャチとイルカ2 ページ4

「どうも、僕が依頼人です」
人が少ない静かな公園。高齢者がよく訪れるような、閑静で自然豊かな場所だった。
「織田作之助だ。依頼を訊こう」
「依頼、の前に少し手を出して頂いてもよろしいですか?」
「ああ」
指紋の採取、か。
二年も経った所為か、記憶が風化しているようで、あんなに鮮明だった小説の内容も今では朧げだ。
だが、この依頼人は、否、この依頼は小説第3巻にまつわる依頼だ。
詳しい内容はあまり覚えていないが、私はこの依頼人を殺すのだ。

そもそも、小説を今の今まではっきり鮮明に覚えているとしたら、織田作の異能も相まって正しく最強になるだろう。なんせ、5秒先の未来と何年後かの結末まで分かっているのだから。

「……はい、ありがとうございました」
「それで依頼は?」
「本日はこれで終わりです。また後日連絡を入れますので、その時に報酬の確認と依頼内容の確認をいたしましょう」
「わかった」

それで私は捕まって、福沢諭吉と対話するのだ。
そうだ、福沢諭吉に助けを求めれば織田作は助かるだろうか?

……いや、愚問だ。そんなの理想のエンディングじゃない。
そしたら、わたしが助けるはずの子供達と、太宰や安吾はどうなるのだ。
そして、あのもっとも心を突かれたジイドとの闘いも。
その全てが無かったことになるのだけは絶対御免だ。

結局、私は織田作を救う事など出来ないし、織田作は織田作として気高く美しいままで殺す(終わる)のが1番なのだ。
それ以外の結末は、ない、のだと思う。

死ぬ事を、受け入れるのだ。そうすれば織田作は織田作のままで……


私は、何者にも成れず、何も得ずに只々終わる。

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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時

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