【文豪ストレイドッグス】シャチはイルカを食べるのだ

ぶっ壊せ！6 ページ14

医務室の女医はマフィア専属とあって豪胆だ。
「今度はなんだ？川か？首吊りか？あたしだって暇じゃないんだが」
ブツブツと文句を言いながらも診ているのは、相手が幹部だからとかではない。
一度その質問をしたら、地位や金で手当の仕方を変える気はないと断言された。
ここには勿体無いぐらいのいい人だ。
何故ここに入ったのか、なんて無粋な詮索をする気はないが。
「廊下で倒れていたんだ」
「廊下で？ あー、こりゃ寝不足だね。寝れば治るさ。ただ、過労の気があるのも否めないね。念のため点滴もしておくよ」
過労？ 仕事のサボリ魔の代名詞みたいなこいつが？
…でもそうか、まだ子供か。
天才的な頭脳を持っていようと、本来の日本であれば働く年じゃない。
「子供なのに大変そうだな」
「何を言ってるんだい。あんただって小さい頃から色々やってるだろ？じゃなきゃ人を殺せないような奴がマフィアに入れるもんか」
いや、私は織田作の真似しただけだし、精神年齢は大人だから
「ん……」
「おや」
太宰が目を覚ましそうだ。
うーん、会いたくないかな？
織田作は行き倒れを放置なんてしないと思ったから行動したけど、今はちょっと
「では、私はこれで失礼しよう」
私は部屋を出ようとした
「織田作！！」
え
その呼び声に思わず振り向いてしまう。
「おや、知り合いかい？ それにしちゃ、坊やのこと随分と知らないようだが」
「いや、初めて会った筈だ。なんで私の名前を知ってるんだ？ 以前に会ったことがあっただろうか？」
「…いや初対面だよ。はじめまして、私は太宰治だ」
「織田作之助だ。よろしく、太宰」
「一先ず坊やは寝ときな。お前は仕事があるだろ？しっし、出てった出てった。ここはあたしの領分だ」
「すまない。太宰、しっかり休めよ」
まだ遊び盛りの子供なのだから


・


「あんたの探し人ってアレかい」
「こんな出会い方をするなんて思ってなかったけどね」
「あの子はあんたの事を知らないようだったが？」
「ふふっ、やだなあ詮索はよしてよ女医。私は貴方の事をそこそこ気に入ってるんだから」
「…程々にしときな。じゃないと逃げられちまうよ」
「うん、まあ最初のうちはそのつもりだよ。下手に関わって織田作が傷付くのは私の望む所ではないからね」
「最初は、ねえ？」
「うん、最初は」
「…はあ〜、あの子も厄介な奴に好かれたもんだね」
「ねー、私もそう思う」

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