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鬱は少しオーバーサイズの青いカーディガンを身にまとっていた。
もう冬も終わり。
そろそろ授業も終了段階へ近づいており、卒業も見えてきた。
「そろそろ卒業ですよ」
鬱はフェンスにもたれかかって、スマートフォンを触り始めた。
別に深い関係になった人もいなければ、思い入れのある教室も先生もいない。
卒業。なんとも思わない所だ。
卒業式も休む気ではあるし。後々面倒だけれど。
『別に卒業って言っても思い入れないし』
「卒業式、グルちゃんのお話があるから皆参加する気満々やで」
『……ああ、現生徒会長のあの子ね…。正直あの子話した事無いし』
「殆どの人が喋った事無いで？生徒会メンバーと友達と先生位？」
じゃあ彼は鬱とは違う感じなのか。
…というか鬱の交流が広いだけか。納得納得。
でも私は結構学校の風紀を乱している所があるから、正直生徒会長とかやる気のある風紀委員とか、そういう系の先生には出会いたくない所。怒られるのは面倒。
『鬱達が学校引っ張るとか、不安』
「ははっ、先輩がまとめる方が不安やけどな」
『私はまとめ役なんて自ら志願しないし』
そう言ってみれば、そよそよと気持ちの良い風が吹いた。
体育館の方から声が聞こえる。
すると、鬱はポケットから何かを取り出して、こちらに投げてきた。
それを片手でキャッチしてみれば、いつも私が食べている棒付きの飴だった。
「よく食べてるからどうかなって。苺味でしたよね」
『…別に苺じゃなくたって』
「珈琲と交換します？」
『いや、苺でいいよ』
きゅる、と飴の包装を剥がして口に入れる。
人工的な苺の甘い味が口いっぱいに広がる。
『君はなんで私に話しかけるの…』
「んーせやなぁ」
悩む素振りを見せ、彼は言った。
「興味持つんは俺の自由やろ？やったら秘密。俺が先輩大好きなんは分かっとるやろうけど」
へらりと笑う彼は、いつだってのらりくらりとしていて、まるで煙草の煙の様に掴めない。裏にある感情さえ読み取れない。
そろそろ帰りたいな、と木から降りると、鬱は口を開いた。
「せんぱい」
振り向きざま、視界は鬱で覆われた。
「ずっと大好きですよ。卒業してもずっとね」
俺先輩に着いていくんで、なんて言われたら。
なんでエリートな此奴が不良な私を追いかけるのかなんて分からないけれど。
特別苺みたいに甘ったるくないな、なんて。
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作戦は貴方と共に / eml→←興味を持つのは自由 / ut
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作者名：眠斗 | 作成日時：2019年5月22日 21時
