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「まずまず一国の総統が、幹部の淹れた毒入り紅茶を飲んで死亡…これは少々どうかと思うのだが」
「まあ、統治に悩んで命を投げたという事にしておきますよ」
お互いが瞳を見つめる。
モノクルを外したエーミール、それを見かねてか眼鏡を外すグルッペン。
レンズで隠された真の瞳が交わる。
「俺に対してこれを出している時点で殺す気は無いのか？エーミール」
これ、とダージリン・アールグレイに入れられたスプーンを指す。
それを見たエーミールは紅茶に似た瞳を細めて答える。
「ハンデですよ。それに負ける気がしないので殺す必要なんて無いんです」
「おお、随分な自信だな、空振りの自信だ」
「随分言ってくれますねグルッペンさん。そう言うグルッペンさんは選ばれる自信が無いみたいですね？謙虚とは言い難いですよ」
「あるに決まっているだろう？」
ははは、と笑いを零すグルッペンを切れ長の瞳でねっとりと見つめる。
何がそんなに愉快なんだか、という表情で見つめているエーミールに笑いを止めたグルッペンが声を掛ける。
「ハーブティー淹れてたよな」
「ええ。ローズヒップですね」
そう言ってハーブティーの入ったガラス製のポットを見つめる。
「グルッペンさんは選ばれない、と気づいてストレス溜まっているかと思いまして」
「はは、生憎そんな事じゃストレスは溜まらないさ。逆にストレスの溜まっている喫煙者はお前だろう？エーミール」
「へっへへ、何言うてるんですかグルッペンさん。自分が選ばれたとでも思っとるんですか？都合のいい事しか耳には入らへん、考えられへん人みたいですね」
にこにこ、と貼り付けた笑顔で互いを見つめ合う。
するとグルッペンはふと机の真ん中にある花瓶を見つめる。
花瓶や花はグルッペンが変えている訳では無く、メイドやエーミール、オスマンが変えることが多い。
グルッペンは、花瓶に生けられた月桂樹の葉と橙色の百合を見つめ、これを生けたのが目の前の博識な男である、と分かったのだ。
花瓶に軽く触れ、ふふ、と薄く笑うとエーミールに言葉を投げた。
「俺もお前と一緒で変わる気は無いぞ、言っておくが」
「諦めが悪いですね。もう良いじゃありませんか。貴方の首に腕を回す女性は沢山おると思いますけど」
「お前にもいると思うがな。まあ俺は彼奴がええんや」
やっぱ諦め悪いなぁ、と零しながらカップに手を伸ばすエーミール。
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作者名：眠斗 | 作成日時：2019年5月22日 21時
