【 d! 】僕色の花束を君へ【短編集】 (ページ16)

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裏切りのピッケル / tntn ページ16

三極世界hoi ＃20 パロ気味
とろとろとろつきー先輩の登場有。

．

私はニュースを見て、溜息をついた。

でも溜息と言うよりかは安堵によるもの。

張り詰めた気を緩めた。

私の恩師＿トロツキーさんが狙われていると情報が入り、彼は相手のピッケルを奪った。
私はそんな彼の計画、逃走の補助等を行っただけだが、彼が無事生き残ったというニュースが、私の生き甲斐となった。

彼が生きていればそれでいい。

ソファーにもたれ掛かり、珈琲をごくりと飲み込んだ。
苦味が体内に広がる。

私は何時この国を出国出来るのか分からない。

トロツキーさんに、用意した護衛は全てつけたから、万が一私の関与が表に出れば、この国の方針的に抹殺…いや、拷問を受ける可能性だって無い訳では無い。

私は彼の為に働いた事は恥じていない。逆に誇っている位。
ピッケルなんかで私の大切な人を殺せると思わないでよね。

彼は無事らしいし、もう使命も終わったなぁ。

空は酷くくすんでいた。
灰色の空は今にも涙を流しそうで、私の心さえ圧迫した。いずれ道やこの街が彼の足跡を消す様に濡れていくだろう。

もう彼に会える事は無いかもしれない。

何時命を取られても可笑しくないのだ。私達に関しては。

すると、玄関から音が鳴った。

ガタン

早いな。もう嗅ぎつけたか。

腰に重みがある事を確認して、照準を扉に向ける。

ふう、と深く息を吐く。
彼を生かすためなら、私は何だってする。

それが犯罪でも、この国の方針でなくても、命を擲つものでも。

彼は私に沢山の事を教えてくれた。

私の残りの人生を掛ける位、容易い。

がちゃり、という音と同時に扉が開いた。

その瞬間、指を離した。

聞き慣れたその音。
銃口から出る煙。

扉の元で倒れる一般兵。

その奥から革靴の奏でる音が聞こえてくる。

かちゃり、とまた構える。

そこから現れたのは＿

『ｯ…！何でここにお偉いさんがいるんですか…』

この国の指導者。
彼の敵。
彼を毛嫌いしている男。

トントン。

私達のような背く人間には鉄槌を下す。

赤いマフラーを揺らし、汗ばみながらも銃口を向ける私を見て、にたりと笑う。

「撃てよ」

照準が合わない。

どうしてこんなに震えている？

「あんな反逆者には勿体無いなぁ」

そう言って赤は私を捉える。
顎を掴まれて非常に不愉快。

「んふ、ええんや。臆病者はこういう戦法をするんやで」

視界が暗転した。