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「おー、お疲れさん。家族とか、ええなあ。」
「堂前さんも彼女さんとですか？ええやないですか。」
「そういうのちゃうけどな。」
二、三言交わした後、じゃあまた、と言って男性は去っていった。
「社員さん、よしもとの。」
『あー、そうなんですか。』
客観的に見たら私は彼女に見えるのか、という僅かな喜びと「そういうのじゃない」という事実が私に重くのしかかる。
『(彼女に見られたかったのか、私は。)』
急に現実に引き戻されたような気がして押し黙ってしまった私に、堂前さんはおーい、と声をかける。
「聞いてるか、A。」
『あっはい、聞いてます。』
「そうかあ、……象見にいこうや、象。」
『はい、行きましょう、是非。』
「急に前のめりやなあ。」
けらけらと笑う堂前さんが可愛らしくて、より一層心が締め付けられる。
「でかいなあ、象。」
『でかいですね。』
「獏の鼻って象やから。それも見たくてなあ。……あと、」
白い息に包まれる堂前さんがどうしようもなく絵になって目を奪われてしまう。
「こんなでかいの見ると落ち着くやん、心も。悩んでる場合じゃないなーってなる、ていうかなあ。」
『……そうですね、本当に。』
「やろ？」
そこから少しの間、私たちは何も発さず、ただただ目の前の大きな象を見つめていた。
「……行こか。」
『はい、』
来た道を引き返すのみだったが、なぜだか全く違う道を通っているような気持ちになった。
「楽しかったなあ。」
『ラクダ乗ってないんやないですか、いいんですか？』
「ええねん、別に。……一緒に来れてよかったなあ。」
独り言のようにもこちらに問いかけているようにも感じられる堂前さんの声に一瞬だけ間を開け、本当にですね、と返した、
「また行こうな、どっか。」
『堂前さんがよければ、いつでも。』
有給取ります、と言うと堂前さんは少しだけ微笑んだ。
「うん、また行こう。絶対。」
帰りの電車も運良く座ることができた私たちは行き以上に穏やかな時間を過ごした。半分過ぎたところで眠り始めてしまったことを勿体無かったなあと後悔しつつ、それを許してくれる堂前さんはやっぱり素敵な人だなあ、と思った。
意識を手放す寸前、手が触れ合ったような気がして、本当な訳ないのに、本当だったらいいな、なんて思ってしまった。
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雨 - とっても素敵な作品で、何回も読み返してます！！これからも楽しみにしております😌😌 (2023年2月3日 3時) (
レス) @page28 id: 9fa3a51cd4 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 堂前さんとの物語更新される度に見させてもらってます。これからも楽しみにしてます😊 (2023年1月4日 23時) (レス) @page22 id: ed97066529 (このIDを非表示/違反報告)
ワカ(プロフ) - ほんと大好きな作品。いつもお疲れ様です！更新待ってます！ (2022年12月24日 14時) (レス) @page16 id: 1bc0632cd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あこ | 作成日時：2022年12月10日 0時
