30.雨の日のトラウマ ページ30
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「お前さ、昨日雨嫌いって言ってたよな」
「え！？」
いきなりその話をするもんだからビックリした。
まず昨日のこと覚えてたんだって。
「俺さ、雨の日にここで失恋してんの」
「.........。」
冷めてるように見える目だけど
彼の表情は曇ってた。
相当辛い思い出だったんだろう。
「浮気されたんだよ、ずっと」
「そ、それは…辛いですね」
それ以外にかけてあげれる言葉が見つからなかった。
だって下手に慰めの言葉をかけてもその人の傷をより深堀してしまう可能性がある。
だからあえてそれ以上は何も言わない。
「辛い、か。辛かったんだろーな」
「えと…、これは私が聞いていい話なんですか？」
「まあ...俺も心のどっかでは誰かに聞いて欲しかったからその相手がアンタになってるだけだし、軽く聞き流してくれる程度で聞いてよ」
「...はい、わかりました。」
「長く付き合ってたし、俺は結構大事にしてたつもりだったんだけどな」
何がいけなかったんだろうなって
悲しそうな表情。
「.......。」
何も言わないんじゃなくて言えなかった。
松村さんはこうやって今でも忘れられないくらい好きだったんだろうな、その彼女さんのこと。
浮気された側の気持ちって経験してるからよく分かる。
私の場合は不倫だけど。
だから松村さんは今、絶対辛いはず。
「振られた日...あの日は俺の気持ちと比例してたよ。昨日みたいな大雨だった」
「...だから昨日、雨の話を私に？」
「んーかもね、雨なんて降らなきゃいちいち思い出さないのにな」
未練なんて感情どっかに消えてくれねーかなって笑った。
その横顔は笑ってるのにやっぱり何処か寂しげでこのまま彼を1人しておくと消えてしまいそうだった。
松村さんに好かれてた彼女さんはどうしてこんなに彼を傷つけるようなことをしたんだろう。
胸が痛い。
多分この時の私は同情だったと思う。
自分も振られた側だったから。
酷い振られ方をされるとトラウマとしてずっと心に残っちゃうもんなんだよね。
だから彼にとって雨の日はトラウマなんだ。
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作者名：つくね
| 作成日時：2021年5月26日 15時
