28.そこら辺 ページ28
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コーヒーを飲み終え、
そのマグカップを洗いにキッチンへ行こうと立ち上がった時だった。
「なぁ」
「えっ...私ですか？」
「どうみてもここにはお前しかいないだろ」
「あ、そうですね。で...、なんですか」
私と同じくソファから立ち上がった彼が
私を見てニヤッと笑う。
「ちょっと今から付き合えよ」
「…え？」
「どーせ暇だろ？」
「暇暇言わないでくださいよ、確かに今は暇ですけど！」
「はいはい、じゃ行くぞ」
面倒くさそうにあしらう感じで話すけど彼の口調はとても穏やかだ。
松村さんって人との距離の縮め方が下手なの？
本当に謎すぎるんだけど。
とりあえずはまあ…実際に暇だし、
私も外に出掛けようと思っていたところだったから行ってこようかな。
そう思い、先に玄関へ向かった松村さんの後を駆け足で追いかける。
「あのー、それよりどこ行くんですか？」
松村さんの背中に向かってそう声をかける。
「そこら辺。」
「そこら辺ってど…」
もう一度聞き返そうとしたらそれを遮るように
「お前ちょっとうるさい」って怒られた。
だからそれ以上は何も聞けずに終わってしまった。
どの靴を履こうかなー、なんて呑気に迷っていたら
玄関には既に松村さんの姿が居ない事に気づき、急いで家から出た。
「おい、鍵。」
「…はい？」
なんのこっちゃ分からず？マークを浮かべる私に呆れた視線を向けた彼。
よくこの冷めた視線を私は松村さんにくらってる気がする。
「鍵を掛けてから家を出てこいよ」
「あ、掛けてきます」
すっかり忘れてた。
他のみんなは寝てるし、鍵をかけ忘れていたら大変な事になる所だった。
危なかったな…っていうかそもそも気づいたんなら松村さんが掛けてくれても良かったのでは？とは思ったけどその本音は言えなかった。
だって絶対文句言われそうだもん。
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作者名：つくね
| 作成日時：2021年5月26日 15時
