第41話 by藪医者 ページ46
――同じころ、サンレーム国立医療センター
ワタシは少し……いや、とても早い夕食をとっていた。
16時から翌朝4時までがワタシのシフト。時間があるときに食べておかなくてはね。
夕食は病院の管理栄養士が炊き出しをしているのをもらってきた。
お粥美味しい。日本の知人に秘伝レシピをもらっておいて正解だった。
『――ザッ―――ザザッ――』
「……全く、揃いも揃って猪なのだから」
通信機から聞こえる声に、思わず苦笑する。
撃ったり飛び降りたり窓を突き破ったりと、前線は非常に愉快なことになっているらしい。
なーんでそんなに「ガンガンいこうぜ」一択なのかね。
ラフ君が皆にぷっ●ょを配っているようだが、それぷ●ちょじゃないからね?
ラフ君お手製のサプリメントだからね?
ちなみにビタミンEは脂溶性。体内に蓄積されやすいから、過剰摂取にも気を付けたまえ。
お粥の最後の一口を口にしながら、机の上のシフト表を見る。
……うん、鬼のスケジュールだ。シフト組んだのワタシだけど。
だが、この、健康に支障のないギリギリの労働時間でも、正直足りていない。
敵も味方も、とりあえず負傷兵は運び込まれて来るため、医療スタッフはてんてこ舞いだ。
ふと時計を見ると、もう15時45分。あと15分で交代の時間だ。
「次の患者は?」
食器をカートに戻しながら、医療本部に残っていた事務に聞く。
「次は……トリアージ赤、47歳男性。頭蓋陥没ですね。あと左腕に銃弾が2発。臨時手術室Eの予定です」
すらすらと答えながら、カルテを渡す。相変わらずの敏腕だ。
「頭部はワタシがやろう。30分で済ませる」
「了解」
シフト調整は事務に任せ、本部を出る。
カルテ片手に病棟を早足で歩いていると、ふと、ノイズ交じりの機械音がした。
……208号室。アル君の病室だ。
足を止め、カーテンの隙間から覗くと、真っ白な包帯まみれのアル君がすやすやと眠っている。
まだ意識は戻っていないようだが……術後経過は良さそうだ。ワタシが執刀したのだから当然だがね。
その横のスツールには、RAVEN君が腰かけ、じっとアル君を見つめている。
と、ノイズ交じりの、今度は聞き覚えのある声が聞こえた。
『多少怪我は負っても死ぬんじゃないぞ。生きるんだ!』
どうやら、RAVEN君が通信機能をつけっぱなしにしているらしい。
思わず笑みがこぼれる。全く、我らが総統殿は。
「さぁて、ワタシも修羅場に戻るかね」
医神アスクレピオスに誓って、もう誰も死なせはしない。
5人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らなこな(プロフ) - 教えてくださりありがとうございます!一応続編できました!リンク載せときますね (2019年10月14日 15時) (レス) id: f463428b23 (このIDを非表示/違反報告)
紫龍 - らなこなさん» 確か、50です。 (2019年10月14日 15時) (レス) id: ed1de518a2 (このIDを非表示/違反報告)
らなこな(プロフ) - 紫龍さん» 一個の作品に何個話が詰めれるんだっけ? (2019年10月14日 15時) (レス) id: f463428b23 (このIDを非表示/違反報告)
紫龍 - 更新しました!続編作った方が良いかと思ったんですが、時間が無くて無理なんで作ってません。すみません… (2019年10月14日 15時) (レス) id: ed1de518a2 (このIDを非表示/違反報告)
時空のラテ(プロフ) - 紫龍さん» 私の所は台風ヤバかったけど平和ですー (2019年10月14日 14時) (レス) id: 12bfae36c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:サンレーム国幹部一同 x他4人 | 作者ホームページ:無い。
作成日時:2019年8月19日 9時