和の妖と洋の怪の日常【ハロウィン戦争】【派生作品】 (ページ5)

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【メルナーレ・コラール Halloween】の日常ページ5

ぱらりぱらり、紙をめくる音が静かな室内に響く。

「…これで最後、ですね」

広い自室に積み重なる本の山。

たった今、読み終わったばかりの小説を山の上に加え、お気に入りの紅茶を口にする。

「…ん…」

いつ飲んでもこの紅茶はとても美味しい。

いい匂いがするし、甘過ぎず、苦過ぎない。

それに心を落ち着けてくれる。

そういえば、読書のついでにちまちまと飲んでいたけれど、よく見ればティーパックが少なくなってしまっている。

今度買い出しに行く必要がありそうだ。

ついでに羽も伸ばそう、大きすぎる翼は場所に困るし、広げる機会も少ないのだから。

「ついでに街の様子も見に行きましょうか…」

買い出しなど使用人さんの誰かに頼めばいいことだと思われがちだけれど、たまには自分で動かないと周りの噂話が入ってこない。

それに、お城とはまた違う活気溢れる街の雰囲気や騒がしさも嫌いではない、むしろ毎日聞いていたいくらい。

無断で抜け出したら怒られるだろうか。

それとも心配されるだろうか。

とりあえず誰かに一言言っておいた方がいい気もするけれど、それで引き止められてしまっては元も子もない。

ここは静かに抜け出すとしよう。

窓を開け放ち、マゼンタと薄紫の翼を大きく広げた。

この部屋もだいぶ広いけれど、それでも翼で一角が埋まる。

周りの家具を倒さないよう数度羽ばたいて、異常がないか確認する、数枚の羽が抜け落ちたくらいで痛いところや軋む音のする場所はない。

窓枠を抜けるために1度翼は畳み、深く外の空気を吸い込んだ。

今日も綺麗な空気の匂いがする、さっき飲んでいた紅茶の匂いも仄かに香る。

やっぱり心安らぐいい匂いだ。

少しはしたないとは思いつつも窓枠を跨ぎ、1度腰掛けてから身体を宙へ投げ出す。

傍から見れば投身にも見えなく無い姿勢からまた翼を広げれば、私の体は風に持ち上げられ、素早く空へ舞い上がった。

風を切り、空を飛び抜けるのはとても気持ちがいいけれど、髪や服装が乱れたりするのが玉に瑕だと私などは考えてしまう。

少し手櫛で髪を整えてからしっかり前を見すえ、翼で風を掴む。

向かうは街へ、一直線に。

「…そういえばお財布持ってきましたっけ？」