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第107話 byレオンハルト ページ18

「……私、こんなに大きな飛行機貸し切りなんて初めてです」
「今までは陸路が主だったからね」
ルヴァナ君は自身の気持ちを落ち着けるように、紅茶に口をつけた。


5日前、ルヴァナ君を大使とする使節団のフローレンツィア派遣が決定された。内密に済ませるため、SPを含んでも数十名の、ごく小規模なものだ。
一応、あちら側の――もっと正確に言えば親友の、しかも割と個人的な――要望で、ワタシも加えられている。

現在はフローレンツィアの所有する、民間旅客機に偽装した政府専用機の中。念には念を入れ、隣国の空港から一般人を装って搭乗した。
搭乗後、機内で礼服に着替え、今に至る。


「……でも、よろしかったんですか?」
ルヴァナ君がこちらを見上げ、小声で聞く。

「ん?」
「医療の方です。……まだ、先の戦いでの負傷兵の皆様が数多く残っておられるとお聞きしましたが」
「あぁ、流石にラフ君一人ではまだ荷が重いだろうが……うちの軍医はそれなりに優秀だからね、上手く回るさ」
ラフ君は、軍属病院だけならそれなりに指揮できるようになってきている。細かい部分を熟練の軍医たちが補助すれば十分維持できるだろう。加えて薬剤師会からは、ベン君をはじめ数名派遣してもらっている。
一般医療の方は、元から医療センター院長が取り仕切っているから問題ない。

「そうでしたか。……それでも、条約締結はできるだけ急いだほうが良いでしょうね」
「焦っては事を仕損じるがね。まあ、早期に味方を作るに越したことはないか」



話していると、ぽーん、と特徴的な電子音が鳴る。

『Bonjour. 快適な空の旅にようこそ』
電子音に続くのは、機長からの機内アナウンス。
『本日の機長は、フローレンツィア空軍カプレ大尉、副機長は同じくハムレット少尉であります』
ルヴァナ君が紅茶を吹きかける。どちらもエースパイロットである。なんという人材の無駄遣い。

「そしてチーフパーサーはこの私」
前からモデルのような完璧なウォーキングでやってきたCAが、優雅な仕草で一礼する。

「アナスタシア・フルーリー。フローレンツィア元首よ」
ルヴァナ君が一瞬凍り付く。それでも外交官としての意地か、動揺を気力で押さえつけ、そっとティーカップを置く。……表情は多少強張っているようだが。

「アニアと呼んでちょうだい」

CAの制服を身にまとった女傑は、一つウインクをしてみせた。



「……相変わらずだな」
「ほんとだよ。もー、やるって言いだしたら聞かないんだから」
ぽつりと呟けば、横の席に座る爺……もとい親友が苦笑した。

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時空のラテ(プロフ) - 皆様お久しぶりです。ようやく更新です。 (6月10日 14時) (レス) @page46 id: 12bfae36c2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉@低浮上 - 梅雨瑠さん» こちらも…!ありがとうございます! (2020年10月18日 20時) (レス) id: 91c6fa7187 (このIDを非表示/違反報告)
梅雨瑠 - 更新頑張ってくださいね!←読者 (2020年10月18日 9時) (レス) id: a2731c2f1a (このIDを非表示/違反報告)
らなこな@新しく始めました!(プロフ) - 臨海凛師さん» ふぁ!?読者様からのコメント...!読んでくれてありがとうございます! (2020年10月18日 8時) (レス) id: 6e36cc4795 (このIDを非表示/違反報告)
臨海凛師(プロフ) - 更新頑張ってください(読者) (2020年10月18日 6時) (レス) id: ad2c0a2c17 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サンレーム国幹部一同 x他3人 | 作者ホームページ:無い。  
作成日時:2020年1月10日 22時

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