とある軍の幹部事情！Story3

第115話　byラファエル ページ26

「あ、ラファエルさん！」

...呼ばれた。

遡ること2時間と数刻前。軍の教習所をお借りしてひたすらに1人でロードワーク2時間。
流石に、疲れた。でも。

「強く...ならなきゃ」

強く。もっと強く。もっと、もっと強く。
疲労感なんて感じちゃいけない。疲れたら動きが鈍く弱くなる。大切な人を守れなくなる。
大切な人を守れずして生きるなんて、厭わしいこと甚だしい。
強く。強く。強く。

「もっと、強く」

軍本部にあるコンビニで先程購入した経口補水液のペットボトルを静かに開けながら歩く。ナガンはいつも美味しくない！と言って敬遠しているが私としては合理的で有り難いのでよく頂いている。
この後は低酸素トレーニング室で筋トレをしよう。脚力と腕力の弱さが私の弱点。ナガンの様に機関銃を振り回せるくらいになりたい。ナガンの様に、強くなりたい。思いを噛み締め左手のペットボトルを握るが、それはびくともしない。...ああ。弱すぎる。
　
低酸素トレーニング室に行く途中、先のお呼ばれに至る。
少々の息切れ。ああ、呼吸が乱れている。強くならなきゃいけないのに。

「出張中のレオンハルト先生からラファエルさんにお手紙です！」
「ああ...有難う」

ルヴァナとレオンさんを筆頭としたサンレーム使節団のフローレンツィア派遣は極内密なもので真実を知っているのは軍内部でも幹部と数人の関係者のみ。ルヴァナもレオンさんも飽くまでも"出張"という名義になっている。
末ざらしの御洒落な封筒に、ワインレッドの封蝋。レオンさんらしい粋さだ。
なんだろう。軍属病院はちゃんと回せているしベンともちゃんと協力出来ている。一般医療も先日センター院長と話したが問題はなさそう。...なんだろう。

封蝋をそっと開ける。開け口の裏に、レオンさんの程よく崩された紺色の筆記体。

Schau alleine(1人でご覧

...1人で。
方向転換、行先変更。自分の部屋へ。
ドアをしっかり閉めて、念の為鍵を掛ける。カーテンを閉め、電気は点けずに。
一度封をした手紙をもう1度開く。一筆箋に万年筆で書かれたであろうドイツ語。

Es ist ein "Bonus" von einem Freund(友人からの"おまけ"だ

ドイツ語を多少勉強しておいて良かった。これ位なら読める。
封筒の中に入っていたのは、先の一筆箋と同じ大きさのやや厚めの紙。

すぐに理解した。
インカムに手を当て、一言。

「...クロ、すぐに来て」

ちょっと考えて、もう一言。

「ナガンも」

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