ワケが２０個 ページ21
ここ最近で一番不機嫌な顔してるよ。
おま、いつも無表情なんだからそんな顔したらビビるでしょうが。
...で？そんな顔して一体何を瞳に言うんだ？
昴「携帯出せ」
...恐喝？
瞳「悪いけど、私携帯なんて持ってないわよ」
昴「あ？」
瞳「だから、持ってないの」
瞳が“携帯を持ってない”と言った瞬間、牛丼を詰まらせたのだろう、綾が思いっきり咽せた。
お茶を探そうと手を動かしてたから綾の前にあるペットボトルを綾に渡した。
物凄い勢いでお茶を飲み出したかと思うと、今度はお茶で咽せた。
ゴホゴホとしている綾の背に手を置き、ポンポンと叩く。
『もー、落ち着きなよ』
綾「...ゴホッ。悪ぃな」
『いーよ』
咽せた綾とそれを宥める私を綺麗にスルーして陽平が瞳に「持ってないの？」と聞いた。
瞳「さっきから言ってるけど...」
陽平「そっか、分かった。じゃあ悪いんだけど放課後になったらもう一度ここに来てくれるかな？」
瞳「い、いけど...」
陽平「それでいいでしょ？昴」
瞳が昴を見るのと同時に私も昴を見た。
そこには小さく「あぁ」と頷きながらつまらなそうにペットボトルの水を飲む昴の姿があった。
そう言えば、と思い周りを見ると、優斗はニコニコしながらお菓子を食べてて、食べ終えた陽平はパソコン、カナ兄は携帯を弄ってる。綾は眠そうに欠伸をしてた。
んー、皆好き勝手してるし、私もこの前買った雑誌読もー。
いつの間にか瞳もヨーグルトを飲み出して、だぁれも話さないという微妙な空気が流れた。
ぁ、
『ねーカナ兄、この服可愛い』
奏「お？可愛いじゃねぇの。今度花音のと一緒に買ってやるよ〜」
『あっ、買ってくれるの！？ありがと、カナ兄！』
奏「お〜」
『でも、私たちだけじゃなくて、カナ兄と七音にもなんか買おうよ。これじゃなくてもいいし...あっ、なんなら全員でオソロにしちゃう！？』
奏「落ち着け落ち着け。...そうだな、オソロにするか〜」
『やったね〜！』
例え気まずい雰囲気の中にいたとしても、私たちは私たち。
私自身、友達とかといる時は周りの空気に合わせたり合わせなかったりなんだけど。
私たち家族は私たちのままを貫く。
＿＿＿＿誰かに干渉してもらおうなんて、思ってない。
誰にも気づかれないように瞳を盗み見る。
『(...うん、今のままだと私たちに関わってこようだなんて思わないと思うし、大丈夫)』
そっと手元にある雑誌に目線を戻した。
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作者名：小林 | 作成日時：2018年10月20日 14時
