【龍ﾈ申】あのね、好きかも【短編集】

安心安堵、次から素直　#12 ページ22

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「あ、俺そういえばこの前Aさん見たわ」



「お、ほんますか」





……がちすか。





「1人じゃなくて男の人と歩いてた」



「ほへー」



「いつもと違う感じのかわいらしい服着られてて。
かわいかったなー」





小川さんとたつのりさんの会話を盗み聞きしながら帰る支度をする俺。

なお、手は震えているとする。


べ、べべべ別に動揺してないし。

ふうん。Aが、男の人と。へえ。
いやあんま興味無いけど？別に。
かわいらしい服？へえ。あいつが。ほおん。
いや、あいつが誰と出かけようが俺には関係ないけど？うん。


………そう、関係、ないんよなぁ。


一目惚れもいいとこ。A見た瞬間勝手に1人で稲妻走って転がるように恋に落ちた。
誰かのものになって欲しくない、俺のこと好きになって欲しいってこんな強く思ったん初めてで。

やのに、俺の内なるヘタレがぐんぐんと育つばかり。


好きな女の子に意地悪しか言えんて、何歳やねん。俺。
情けなさすぎるやろ。

顔を合わせれば悪態付く俺に、毎度呆れた表情のA。
こんなん、嫌われててもしゃーないよなぁ、なんて。


がっくり。まさにその字の通りに肩が落ちる。
深い深ぁーいため息もひとつ。

A、お前は幸せになってくれ。
いや願わくばならんといてくれ。どっちやねん。





「あ、そういえばこの前たまたま聞いたんすけど、
Aちゃん男兄弟いるらしいっす。

Aちゃんと身長同じくらいーゆーて」



「あーじゃあ兄弟だったかも。
身長全く一緒だったし、なんなら顔似てたし」





″バレー始めたの、兄がキッカケなんだよね″、なんて
どこで言ってたか、そんなAの言葉が脳内を走る。


……え、じゃあほんまに、兄妹！？

デートやなくて！？えっほなそれ買いもんってことよな！？
信じてええんやろな！？いい！？別にいいよな！？





「よっしゃーー！！」



「なんあれ」



「知らんス」






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