【龍ﾈ申】あのね、好きかも【短編集】

ずっと恋だよ　#14 ページ12

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「祐希さん、見すぎやないすか」





見すぎ、とは。
何をだなんて、自分が1番分かってる。


今日、練習として借りたこの体育館の、職員のあの子。
名前も何も知らないし話したこともない、そんなほぼ他人のような関係の、あの子。

だけど、彼女がどんな風に笑って、どんな風に瞬きをするのか知っている。


分かってる。俺があの子に抱く感情は恋だと。

だけど、藍、…コイツにだけは悟られたくなくて、
見え見えの嘘を全面に貼り付け、堂々と彼と向き合った。





「見………てない」



「いや見てるやろ」





さすが関西人。
ツッコミのスピードが桁違い。

自衛のためについた嘘も、べろりと剥がされて、
俺は恥ずかしいやら腹立たしいやら、
なんとも言えない気持ちを抱えながら頭をかいた。





「見てないって！

お前はちょっと黙ってろ！(笑)」



「こわ！(笑)

ほな、邪魔者は退散しまぁす」





けらけらと笑いながら調子良く去っていく藍にため息がでる。


さて、これからどうするかな。
アイツのことだから誰にも言いふらさないだろうけど、
態度が分かりやすいやつだしなぁ。

何事も悪い方に行かないよう願いつつ、
何気なくまた、あの子の方を向く。





「！」





ぱちり。

彼女と、目が合った。


え、なんであの人こっち見てんの。
なんで俺のこと見てんの。

なんで、目ェ合ったの。


不意に起きた出来事で固まってしまった俺に
不審がることも無く、彼女は人好きのする笑みを浮かべて
どこかへ行ってしまった。


笑った。俺に。俺だけに。


それを理解した途端味わったことの無い感情がふつふつと湧き出すと同時に、
自分の顔が段々熱くなっていくのを感じる。





「………ああくそ、

かわいーな、ほんと」





名前も何も知らない君に、俺はこんなにも惚れているのだ。






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