第三皇女 困惑 1 ページ10
A side
某時刻……
目を開けると、天井が見える。自分はベッドの上に寝かされているのか。
周りを見渡せば日差しが朱くなっており、夕暮れ時だと解る。
A「アクセルが運んでくれたのですね」
ベッドから起き上がると、寝室の扉が開き、見慣れた人物が目を丸くしていた。
A「アクセル」
その人物の名前を呼べば、勢いよく抱きつかれた。
A「アクセル？」
アクセル「A……、良かった……!!」
抱きしめるアクセルの身体が震えている。
A「アクセル、どうしたんですか？」
アクセル「……どうしたんですか、じゃありません！ 執務室に戻れば貴女は倒れていて、ソルも動かない！ か弱い呼吸しか聞き取れない状況で、医師を呼びたかったのですが、貴女の周りに魔力の帯が見える以上、医師すら呼べない!!」
アクセルの目には、うっすらと涙が浮かんでいる。
思っていた以上に、心配をかけてしまったらしい。
A「アクセル、ごめんなさい。それに、ありがとう」
私はアクセルを抱きしめ、生きている事を実感していた。
・ ・ ・ ・ ・
フィオ side
私は何故、ベッドに寝かされていたのだろうか。洞窟内の出来事以降、記憶がない。
部屋の中はどう見ても宿屋の一室ではなさそうで、思い出そうとしても、全く思い出せない状況だ。
部屋の中には自分以外誰もいない。どうすれば良いのかと考えていたら、部屋の扉が開いた。
ユアン「フィオ！ 良かった、気が付いたんだね！」
フィオ「ユアン、あの聞きたいことが……」
ユアン「ちょっと待って！ カーティス兄さん達を呼んでくるから！」
フィオ「えっ？ ちょっと待って！」
制止の声も届かず、ユアンは部屋から出ていく。出ていく前に、状況を説明して欲しい。
ユアンが出ていってから数分後、また部屋の扉が開く。
カーティス「ようやく起きたんですか、チビ姫」
アーネスト「全く、少しは自覚して頂きたい」
ロウ「ですが、お気付きになられて何よりです」
フィオ「カー君、アー君、老師……」
何だろう。皆の姿を見ると、ほっとする。
あれ？ 呼びに行ったユアンはどうしたんだろう。
カーティス「あぁ、ユアンなら……」
ユアン「ごめんなさい！ 連れて来るのに手間取って」
ユアンの後ろから姿を現した獣に息を飲む。
状況を理解するのは、まだ遠いようだ。
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作者名：print11 | 作成日時：2019年6月30日 22時
