第三皇女 懸命、時々荒れる 7 ページ8
カーティスが足止め役を買い、私はユアンの元へ急ぐ。
カーティスの動きは素早く、的確に傷を負わせていく。
銀狼も苛立ちと、傷のせいもあるのか、動きが大きくなり、周りの壁が破壊していった。
フィオ(?)「ユアン、まだ動けますか？」
ユアン「ててっ……！ 防護魔法をかけてくれてなかったら、骨が折れてました」
フィオ(?)「今、カーティスが引き付けてくれています。ユアン、氷結魔法の準備をして下さい」
ユアン「え？ 僕、氷結魔法は少し……」
フィオ(?)「二人で併せなければ、あの銀狼の動きは止めれません」
ユアン「はい。解りました」
急いで詠唱の準備に入り、唱え始める。
カーティス「詠唱準備に入りましたか。ここからが、長いですね」
カーティスの視線と交じりあい、無言で頷く。
詠唱の中盤で魔力の流れを感じ取ったのか、銀狼が此方に向き、カーティスを振りほどこうとしていた。
カーティス「チビ姫！ ユアン!!」
詠唱完了まであと少し。
銀狼から魔法が此方に放たれ、避けることが出来ない。
間に合わなかった、と思ったが、目の前には防護壁で、カーティスが衝撃を防いでくれていた。
魔法石は使いきっていたと思っていたが、一つだけ残していたようだ。
カーティス「流石に持たない……！ 詠唱は!?」
その一言に、最後の詠唱を口にした。
フィオ(?)「汝と敵対する者に、罰を与えん」
ユアン「我に力を貸し、その力を解放せよ」
視線で合図を交わし、ユアンと声を合わせる。
壁が破壊されたのと同時に魔法を放ち、銀狼の周りは氷に覆われていく。
足元から凍らせて身動きを封じ、その間に銀狼を氷の檻が閉じ込めていく。
氷の檻に閉じ込められた銀狼。これがただの檻なら、相手にとっては問題はない。
少しでも檻を壊そうとすれば、檻から発生する氷の刃で刺される。
またこの魔法を使用した本人が、檻を使って自由に攻撃をする事も可能なのだ。
フィオ(?)「銀狼殿。話を聞いてくれませんか？」
身体中に傷を負い、更には氷の檻に閉じ込められたのであれば、興奮が覚めやらないだろう。
言葉で通じないのであれば、思念魔法で直接頭に語りかける。
そのお陰なのか暴れる事を止め、思念を通して言葉を返してくれる。
銀狼《小娘。貴様は何者だ？ 姿は同じでも、最初にあった小娘の気配とは違う》
思念を通して言葉を返していき、対話を成立させていったのだ。
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作者名：print11 | 作成日時：2019年6月30日 22時
