第三皇女 対話 4 ページ44
うっすらと血が滲む手を、ミハイルは両手でそっと包み込んだ。
ミハイル「貴方に、秘密にしていたことがあるんだ」
ローゼ「え？」
ミハイル「俺は、地属性の魔導師。それは、知ってますよね」
地属性!? その専門なら、尚更私よりも治療に長ける。
治療の手を休ませず、耳はミハイルの声に傾ける。
ミハイル「攻撃魔法の使えない魔導師が、使える魔法はなんだと思います？」
彼の細い指先が、ネーベルの姫の掌を辿る。
するり、と一撫で。触れ合いとも呼べぬような、十数秒の接触。掌には、明らかな変化があった。
掌の真ん中、頭脳線に沿うような形で刻まれていた三つの傷跡が、綺麗さっぱり消えていたのだ。
フィオ「そこの貴方！ 地属性なら手伝って下さい!!」
ミハイル「あっ、貴方は？」
ユアン「説明は後。フィオ様を手伝ってあげて。説明は、僕から姫様にする」
ミハイルよりも年下であろうユアンに言われ、彼は私の側へ来る。
その間に、ユアンがネーベルの姫とヴォルフさんへ説明をする。
フィオ「貴方の魔法は何処まで可能ですか？」
ミハイル「自分に出来るのは、傷を塞ぐことくらい、です」
フィオ「そう。なら、変わって下さい。彼の体力の維持は、私の方でします」
いま実行している魔法を解除し、別の魔法に取り掛かる。
手が震える。元々、魔法自体はそこまで卓越しておらず、使うときにはいつも、A姉様かカル様がいた。
でも、弱気にはならない。ネーベルの姫が居る所で、そんな失態は見せたくない。
私から、兄様と姉様を奪った憎い相手。分かり合いたくなんてない。
ユアン「…………!! フィオ!!」
あれ？ わたし……。
その後の事は、余り憶えていない。
・ ・ ・ ・ ・
目が覚めればベッドの上。
必死に考えを巡らし、思い出す。
ネーベルの従者の治療をしていて、それで……。
風が頬を撫でる。ふと、風が吹く方に目を向ければ、ユアンが椅子に座って眠っていた。
フィオ「ユアン」
フィオ「
ベットの下から起き上がったと思えば、今度はベットの上に上がり込む。
フィオ「どうして？」
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作者名：print11 | 作成日時：2019年6月30日 22時
