もう一人の転生者 4 (ページ36)

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第三皇女出会い1 ページ36

あれから一時間位経っただろうか、少し町の中が騒がしくなった。

船は無事に到着したらしいので、ユアンに迎えに行かせたが、どうにも遅い。
町が騒がしくなっている原因は、到着した船が入って来てからだ。

フィオ「迎えに行ってからが、遅い。銀(ｱﾙｷﾞｭﾛｽ)、黒(ｼｭﾊﾞﾙﾂ)、港に行きましょう」

異論は無いようで、二匹は素直に私の後を付いてきてくれた。

・・・・・
セレス side

やっとの思いで港に着いた私達は、町の皆には歓迎されていなかった。

見慣れない船が近付いてきた事に警戒し、武器を持つ人間が集まってくる。
船員達は、敵意がないことを示すために白い布を振った。船を浅橋に寄せると、一人の男が近付いてくる。

四十過ぎくらいの男は、抜き身の剣を手にしたまま、警戒心も顕に船上の私達を睨み付けた。

町人1「命が惜しければ、即刻立ち去れ」

船員1「町に入れてくれ！怪我人がいるんだ！」

町人1「断る。怪しい船を入れるような馬鹿な真似、誰がするか」

船員2「入港許可証ならある！ ……ここではなく、ブラオのだが。海賊に襲われて、怪我人がいる。頼む、助けてくれ」

懇願する船員を見て、男は目を眇めた。面倒事は御免だと言わんばかりの、渋面を浮かべる。

町人1「尚更だ。とっとと出て行け！海賊がお前らを追って来たら、どう責任を取ってくれるんだ！？」

男の言い分は、尤もだった。
誰だって、自分が可愛い。それに自分の家族や仲間達にまで火の粉が及ぶとなれば、余計だろう。周囲の安全の為には、他人は切り捨てる。非道だとは思うが、理解は出来る。

でも、だからといって引く訳にはいかない。
そして、これ以上、押し問答を続けている時間もなかった。

？？？「か、海賊なら皆死んだわよ……！」

さて、どうするか。そう思案していた私の耳に飛び込んできたのは、若い女の声だった。隣に視線を映すと、我侭令嬢の姿。確か名は、フローラだったか。

フローラ「腕の立つ騎士が偶然乗っていて、全員倒してくれたわ。船も燃えたから、追ってくる心配もないわよ」

フローラは、だから何の心配もないのだと、必死に訴える。
そんな彼女の様子に、私は驚きを隠せなかった。

フローラ「だから、お願い。私達を受け入れて」

船の縁についた白い繊手も、声も震えている。横顔は青白く、首筋を冷や汗が伝う。
桟橋から見上げてくる男と、男の持つ剣が恐ろしいんだろう。