第三皇女 不安2 ー護衛騎士の葛藤ー ページ34
セレス side
先に駆け出した男性は、カーティス殿の情報によると、ネーベルの姫様の護衛のクラウス・フォン・ベールマー殿であろう。
それよりも、フードで顔を隠しているもう一人の男性と話をしなくてはいけない。
セレス「貴男も行く前に、少し話があるのですが……」
？？？「…………」
セレス「ネーベル国王の鳥様？」
カーティス殿と同じ武器を使い、細心のナイフを首元に当てられる。
？？？「何者だ」
セレス「随分、短気ですね」
挑発染みた発言をすれば、更にナイフを食い込ませ、一筋の血がこぼれる。
血の臭いを嗅ぎ取ったのか、
セレス「私は、ムーンパレス十二騎士の一人。トールギス皇子殿下の命にて、貴男と話がしたいと思っています」
？？？「何故、俺がネーベルの使いと判った？」
セレス「優秀な諜報員が一人いるんです。その者から、容姿等の連絡は受けていました。なので、名前も解りますよ、カラス殿？」
何時までも首にナイフを食い込ませる訳にはいかず、拘束が緩んだ隙を狙ってカラスから距離をとる。
セレス「こちらに敵対意識はありません。姫様もそちらに滞在されて居られますし、何より境遇を悪くするのは騎士の務めではありません」
カラス「成る程。用件は何だ、セレスティア・ハウ」
名前は名乗っていなかったが、フルネームで返したという事は、こちらの情報も少なからず持っているという事。
セレス「流石は、ネーベルの密偵という所ですか。用件は是です。この書簡をネーベル国王陛下に届けて頂きたい」
トールギス様から預かった書簡をカラスに渡す。
カラス「内容は？」
セレス「見れば解ると、皇子殿下は言っておりました」
何も詮索する事もなく、渡した書簡を懐へ入れる。
ある程度、こちらの素性が判っているから、信用されていると思っていいのだろうか。
セレス「それより、貴男の連れの方を追いかけなくては行けませんね」
カラス「俺のツレじゃない」
それ以降、カラスとの会話は無い。
駆けだした先には、ベールマー殿が突き飛ばされ、そちらを見ていた。男が大ぶりな二本のナイフを交差させ、海賊の剣を受け止めている。
力で弾き返し、心臓を一突き。振り返った男は、頬に散った返り血を手の甲で乱暴に拭い、不機嫌な顔でベールマー殿をを睨み、叱責していた。
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作者名：print11 | 作成日時：2019年6月30日 22時
