もう一人の転生者 4 (ページ20)

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第三皇女ー王女の交流 2ーページ20

私が剥いた芋の皮を摘み上げ、クルトさんが目を輝かせる。
誉められて嬉しいけど、ボロが出そうで怖い。
フォローして、という意味を込めて視線を向けたクラウスは、笑顔でクルトさんの言葉に頷いていた。

なんで孫娘を誉められた爺ちゃんみたいな反応してんの!?
そんな場合じゃないから！ちょっとは空気を読んでくれるかなあ!?

意思疎通の出来ない護衛を睥睨しつつ、誰か話を逸らして下さいと切に願った、その時。
厨房の扉が開き、食材を片手で担いだヤンさんが戻ってきた。

ヤン「お前ら、お嬢さんに仕事押し付けて遊んでんじゃねえぞ！」

ヤンさんに一喝され、二人はそそくさと仕事に戻る。厨房のトップはパウルさんだが、実質的な力関係はちょっと違うらしい。
まぁ、なにはともあれ、話が逸れて助かった。

？？？「マリーちゃん！」

ローゼ「へ？」

安堵に胸を撫で下ろした私は、女性の声で呼ばれ、目を丸くする。

？？？「ここにいたのね？道理で探しても見つからない訳だわ」

ローゼ「ビアンカさん！」

ヤンさんに続き、厨房に入ってきたのはビアンカ姐さんだった。倉庫から戻る途中で、会ったらしい。ビアンカ姐さんが私を探していると知り、案内してくれたそうだ。

ビアンカ「どこにも姿が見えなくなっちゃったから焦ったわ」

ローゼ「ご、ごめんなさい」

ビアンカ「あら、謝らなくていいのよ。会いたくて、勝手に探していたんですもの。それに私が、悠長に着替えをしていたせいだし」

笑ってそう言ったビアンカ姐さんは、確かに乗船時と服装がガラリと変わっていた。
さっきまで、清楚な濃紺のワンピース姿だった。しかし今のビアンカ姐さんは、麻のシャツにダークブラウンのジレ、それから黒のパンツに黒のブーツ。
波打つ豊かな黒髪は、項のあたりで一つに括られている。

ローゼ「その服装……」

どう見ても、男装だ。
妙齢の美女が、男物を身に纏う。一見、アンバランスにも見えるが、不思議と……。

ビアンカ「似合うかしら？」

ローゼ「はい、とっても」

むしろ、似合いすぎて怖い。
ゲームのスチルでも見たことのないビアンカ姐さんの男装は、凛としていて格好良く、妙な扉を開けてしまいそうだ。
ポロリと零れ落ちた私の本音を聞いて、ビアンカ姐さんの艶のある唇がにっこりと弧を描いた。

ビアンカ「ありがとう。貴方にそう言ってもらえるのが、一番嬉しいわ」

妖艶な笑みを向けられ、思わず怯む。