もう一人の転生者 1 (ページ39)

今日:12 hit、昨日:3 hit、合計:29,316 hit

皇女とお話 ―王女の奮闘5― ページ39

ローゼマリー side

ユリウス様に窘められ、エマさんはしゅんと萎れる。
慌ててフォローを入れた私だったが、暫し躊躇ってから、思い切って口を開いた。言うとしたら、今しかないと覚悟を決めて。

ローゼ「ただ、私……その、憧れている方が……」

ゲオルク「えっ？！」

エマ「えっ！」

ユリウス「おやおや」

エマ「まぁ！一体どんな方？」

がっかりさせてしまうかと思ったが、エマさんは興味津々で食い付いてきた。女子の恋バナ好きは、何処の世界でも共通らしい。
男子二人を追い払ったエマさんに根掘り葉掘り聞かれ、私は困り果てた。

騎士団長とはまだ会えていないので、濁しながら伝えるしかない。でもそんな曖昧情報でも、彼女は納得してくれた。
帰り際に、応援するわ、と笑顔で言ってくれたので、何とかフラグは折れた事になる……と思いたい。

・・・・・

Aside

A「……という事があったらしいの。料理について聞いてきた時は本当に驚愕(びっくり)したわ。それに、アイゲル家からお礼の手紙まできたのよ」

ロウ「なんとも微笑ましい話ですな」

整えられた灰色の顎鬚を触りながら、新緑の目を細める。
髭と同じ色をした髪は背中まで伸びており、一つに束ねている。男の色気を漂わす老師は、中老になる年だというから驚きだ。

カーティス「皇女(プリンセス)にはいらっしゃいませんよね、婚約者。いたら僕に言って下さいね？」

そんな射殺すような目を見て、婚約者います、なんて言えるわけない。しかもそれが今向かっているネーベルに居ますなんて言った暁には、一仕事してきそうな感じがしてならない。
ふと、セレスが窓の方に目をやる。

セレス「あら？招かねざるお客様ですね。姫様とロウ老師はここで待機をお願いします。カーティス、アルマー」

カーティス「全く、無粋な訪問者ですね」

アクセル「静かに航海したかったんですけど」

セレス「では、行ってまいります。カーティスは左を、アルマーは右をお願いします。私は中央を守ります」

三人は席を離れ、持ち場へと足を運んだ。部屋に残されたのは私とロウ老師だけ。

ロウ「セレスティア殿がいるから安全とは限りません」

A「はい、老師。でも、最高の番犬が私の側にいます」

私の足元で丸くなっているソルを見つめた。時折、耳がピクピクと反応しているのは、周囲が騒がしくなった事に気付いたのだろう。
もうじき、戦場になる。