もう一人の転生者 1 (ページ35)

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皇女とお話 ―王女の奮闘1― ページ35

一通りの応酬が終わった所で、一番大きい客室でお茶をした。

ロウ「ときにA様。ネーベルの皇子と皇女の話を、聞いてもよろしいですかな？」

A「そうですね。ローゼからの手紙の話をしましょう」

・・・・・

ローゼマリーside

ヨハンの件が方がついた次は、ナルシストな貴族のボンボンのフラグを叩き折ります。
ゲオルク・ツー・アイゲル。侯爵家の後継ぎなして、後のローゼマリーの婚約者だ。

あはははは……冗談やめろや。

ヒロインに熨斗付けて差し上げたいが、さすがの私も良心が咎める。譲り渡すにしても、もう少しマシな人間にしなければならない。
それにはまず、彼の生い立ちを振り返る必要がある。

絹糸のようなプラチナブロンドなに、アメジストの瞳。触れれば壊れてしまいそうな儚げな美貌の母君は、佳人薄命を体現するように、ゲオルクが八歳の頃になくなった。
美しい母を亡くした幼子は、嘆き哀しんだ。けれどそんな彼を慰める者は、誰もいなかった。

侯爵家の当主である父は、最愛の女性を亡くし、絶望した。たった一人捨て置かれた息子など振り返りもせず、荒れた生活を送る。
当主の実弟にして、ゲオルクの叔父も、荒れた当主を支え立ち直らせようと必死になり、彼の傍にいてやる事は叶わなかった。

たった一人残されたゲオルクは、亡き母の面影を求め続け、ある日鏡の中に母を見つけた。
母のショールを頭から被った少年。それは、白百合の君と謳われた母の生き写しであった。

写った少年こそ、ゲオルク本人である。
姿を写す物さえあれば、母に会える。それが、ゲオルクがナルシストになった発端だ。

彼の母は、病弱な方だった。
初めて会えた日は、五歳で、ゲオルクが六歳の頃。婚約者候補として、私とゲオルクを引き合わせる目的だったろうが、私はゲオルクを放棄し、彼の母君になついた。
ベッドの上で上半身を起こした母君は、私に微笑む。

モーリッツ「無作法をお許し下さい、王女陛下。妻は身体が弱く、季節の変わり目は体調を崩しがちなのです」

？？？「お目にかかれて光栄です。モーリッツの妻、エマと申します」

ローゼ「ローゼマリーです」

ニコニコ笑うエマさんに、私は見惚れながらも挨拶をした。
そして、婚約者候補という立場を利用し、何度もお見舞いに行った。
何度か会いに行っているうちに、エマさんの不調の原因をいくつか見つけたのだ。