もう一人の転生者 1 (ページ32)

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皇女の出立前日 2 ページ32

近衛兵の訓練場近くまで来たは良いが、どうやって中に入ろうかと悩んだ。
なぜなら、騎士団専用の訓練場とは違い、一般近衛兵の訓練場。しかも、皇女である自分が中に入るわけにもいかない。普段は王族の人間は立ち入らない場所であるため、周りの視線が少々痛かった。

A「あの場から出たいがために来たのはいいけど、何も考えていなかったわ」

どのみちこれ以上は視線が気になり進めず、引き返そうとした。

アクセル「A様……？」

A「アクセル」

近衛兵1「アクセルの恋人か？」

近衛兵2「随分綺麗な顔だな！アクセルとの付き合いは長いのか？」

アクセル「ちょっ……、この方は……！」

A「ふふっ……！彼とは五年の付き合いになります」

近衛兵1「ほぅ……。今日のアクセルは随分と上の空だったが、そういう事か」

近衛兵3 「今日なんて、ライエルに叩きのめされていたもんな」

？？？「何をしているんですか。休憩の時間は終わっていますよ」

短い銀髪に赤い目。端正な態度が冷たい印象を与えるが、彼がそんな人で無い事は知っている。
彼もまた、十二騎士候補生。アーネスト・フォン・ライエル。
彼に注意をされた近衛兵達は、一目散に散らばっていった。

アーネスト「珍しいお客様ですね」

A「御機嫌よう、アーネスト」

アーネスト「……ここは皇女様が来るべき所ではありませんが、アルマーでしょう？さっさと連れ帰って頂けますか？」

A「その様子だと、他の者達から聞いてるのね。迷惑をかけたわ」

アーネスト「とばっちりを受けたくありませんので、以後このような事が無いようにお願いします」

A「解ったわ。でも、私は貴方のそういう所好きよ」

アーネスト「……誤解を招く発言も、如何かと思います」

A「ふふっ……。じゃあ、アクセルは連れて行くわ」

アクセルの腕を引き、自室まで戻る。
自室までは距離はあるが、言葉は交わさなかった。アクセルの顔は曇ったままだが、気にしてはいられない。一刻も早く話をすべく、足早に歩を進めていた。
言わないといけない事がたくさんあるが、今は言えない。
自室に着くまで、頭の中で言わなくてはいけない事を整理していったのだ。