もう一人の転生者 1 (ページ30)

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皇女と粛清ページ30

トール「噂は本当なのか？」

ユアン「その噂なら、僕も聞いたことがあります。トールギス様達とは髪の色が違い、魔力も待たないのに、王家の人間だなんておかしいと」

A「ただでさえあの子は、自分を蔑んでいます。聞くはずのない噂まで耳にしてしまった」

トール「なら、この件は俺に預からせて貰う。ラーズとカーティス、カル辺りが適任だろう。父には報告しておく」

フィオ「お兄様、私も手伝いたいです」

トール「フィオ、お前にはすべき事がある。フィリーと深まった溝の修復だ。」

A「そうですね。一度深まった溝の修復は難しい。フィオのせいではないけど、一歩ずつ歩み寄らなければ、拒絶されてしまう」

フィオ「でもフィリーお姉様は、私を避けて、近づく事すら出来ません」

A「今は少し冷静になる時間が必要です。その後からでも遅くはありません。時間が必要なのです」

フィオ「解りました。お兄様、お姉様、私、フィリーお姉様と仲良くなれますか？」

A「もちろん。あの子は、妹が出来るのを楽しみにしていました」

トール「そうだな。今は素直じゃないが、あいつは元々人の心を良く汲んでくれる優しい子だ」

兄様は、フィオの頭を軽く叩いて部屋から出ていった。フィオは床に座り込み、泣き崩れ、側にいたユアンに抱きついている。
フィオもフィオで、フィリーに拒絶されている事が寂しかったのだろう。

その後、兄様達によって侍女に執事、城に仕える近衛兵達の粛清が行われた。
真相はこうだ。
ムーンパレスに内通者がおり、フィリーは人質に最適だったらしい。
元々、自分だけが違う事に蔑んでおり、其処を突く事で、フィリー自身を自分の足で来させ、人質として利用するつもりだった。
物資が豊富なムーンパレスの利益にあやかろうとした、破落戸(ごろつき)だった。
だが、フィリーの側には常にウェインがいたため、フィリーが動く事がなかった。
ここ最近、フィリーの周りをうろつく不審な影もいたとのこと。

悪事はカーティスによって暴かれ、口を割らない者には、カルの魔術で強制に口を割らせた。
尚も抵抗してくる者には、ラーズが直々に制裁を下した。
破落戸に加担したした者達は一斉に解雇され、良からぬ噂も立つことはなくなっていった。
その中で、一つだけ変わった事がある。
兄様の髪だ。
青銀の髪が、フィリーと同じ濃紺になった。
周りの者は驚いていたが、私は良く似合っていると感じた。