もう一人の転生者 1 (ページ29)

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皇女と第三皇女ページ29

フィオの部屋の前に来ると、兄様とフィオ声が聞こえた。
フィオが一方的に、兄様に言っているようにしか聞こえないが……。
ユアンのフィオを宥める声も一緒に聞こえる。
扉を鳴らし、フィオの部屋に入る。

A「フィオ、入らせて頂くわ」

フィオ「お姉様！」

トール「A、フィリーは？」

A「今は眠っています。ウェインが側にいるので、問題はありません」

フィオ「お姉様、ネーベル行きは私では務まりませんか？」

トール「フィオ、いい加減に……」

A「フィオ、お兄様に謝りなさい」

フィオ「えっ」

A「兄様は伝えたはずです。それにも拘わらず、我儘を通すのはおよしなさい」

フィオ「でも……！」

A「フィオ、今の貴女に務まるとは私も思えません。それは、兄様にも指摘されたはずです」

フィオ「…………」

A「貴女の気持ちは嬉しく思いますが、私が赴く事は変わりません」

フィオは涙ぐみながら兄様の前に立ち、頭を下げた。

フィオ「お兄様、ごめんなさい」

トール「いや、いい。フィオが役に立ちたいと思っている事は解ったが、早急だ。もう少し学んでからでも遅くない。その気があるなら、それなりの教師を付けよう」

フィオ「お願いします！」

ユアン「えー！フィオ様ばかりズルいです。僕にもお願いします、トールギス様！」

トール「ははっ……！解った。ユアンもフィオと一緒に受けると良い」

喜ぶユアンに、少し不服そうなフィオ。でも、嬉しさの方が勝っているようで笑っていた。

A「お兄様、少しよろしいでしょうか？」

トール「何だ？アクセルとは和解したのか？」

A「アクセルの事はおいて下さい。フィリーの事です」

トール「フィリー？フィオへの態度の事か？」

A「違います。兄様は、フィリーの噂を御存じありませんか？」

噂の件に対して反応したのは、兄様ではなくフィオの方だった。

フィオ「私、知ってる。フィリーお姉様の当りが強くなったのも、そのせいだもの」

トール「フィオ、聞いても？」

フィオ「フィリーお姉様が、私達の本当の兄妹ではなくて拾われた子だと。お父様がお優しいから、庇護で王家の人間になったんだって……」

トール「何だと……」

兄様も初耳だったらしく、顔を歪めていた。
私も兄様も噂好きではないが、フィリーのために詳しく話を聞いた。