もう一人の転生者 1 (ページ23)

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王女の兄弟 2 ページ23

クリス「あまり接触のない私から見ても、ヨハンはお前に依存し過ぎているように思う。……会う度にヨハンは、お前の陰に隠れながらも、私を射殺さんばかりに睨み付けてくるからな」

ふ、と息を吐くように兄様は苦笑を浮かべた。同情が混ざった視線から察するに、ヨハンの呪詛めいた目を思い出しているに違いない。

クリス「もしや、私以外にもああなのか？」

ローゼ「はい……。A姉様やトールギス様がいるときは、そうでもないのですが……」

侍女に襲いかかりそうになった件をかいつまんではなすと、兄様の柳眉が潜められた。

クリス「大切な姉を奪われまいと必死なのは理解できるが、幼子の癇癪にしては行き過ぎているな」

ええ、ヤンデレが発症しかかってますから。
シスコンの上にヤンデレを拗らせ始めた弟とか、重すぎる。私の精神衛生上、宜しくない。

ローゼ「止める者が周囲に誰もおりませんので、直るどころか酷くなる一方。弟を正しく導ける度量が、私にあれば良かったのですが。不出来な姉でお恥ずかしい限りです」

クリス「お前が不出来なのではない。どんなに力や度量があろうとも、一人で為せぬ事はある。だからこそお前は、私の元へ来たのだろう？」

兄様の言葉に、私は深く頷いてから、背筋を伸ばした。

ローゼ「もし、お許し下さるのでしたら、将来、兄様を支える一人として、弟を……ヨハンを厳しく育ててはいただけませんか？」

クリス「……お前は、それで良いのか？」

ローゼ「勿論です。離れ離れになっても、私があの子の姉である事に、変わりはありません」

クリス「そうか」

ぽつりと呟くと、兄様は珍しくも柔らかな微笑を浮かべた。
これで、A姉様が此方に来るまでに、ヨハンは真っ当な人間になれるはずだ。
否、そうなるべきなのだ。これ以上、お二方を頼りにし過ぎてはいけない。

その後、兄様が父様に進言して下さったのか、職務怠慢の教師達は解雇され、代わりに優秀で厳しい教師が弟に付けられた。
兄様自身も弟の教育に関わり、厳しく……そりゃもう厳しく弟を育てている。

ローゼ「ときに兄様、A姉様が次に来られるのはいつ頃ですか？」

クリス「……ローゼは、A姫への気持ちを少し押さえてはどうかな」

兄様とすれ違った時、おもむろに聞いた質問に、別の意味で兄様を困らせたのは言うまでもない。