もう一人の転生者 1 (ページ19)

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皇子の苦悩ページ19

何とも言えない空気の中、Aの部屋の扉がなる。

A「どうぞ」

ラーズ「失礼します。A皇女様、トールギス殿下と陛下がお呼びです」

A「解りました。すぐに行きます」

ラーズ「アクセル、お前も同席しろとの事だ」

アクセル「あっ、はい」

ラーズと共に、陛下とトールギスが待っているであろう室へと歩みを進めた。

・・・・・

トールギスside

トール「父上、本日は何の用事でしょうか？」

部屋に入ると、険しい顔をした父、シュタイナー陛下が報告書を読んでいた。

陛下「トールギス、ネーベルの使者として、王家の者を向かわせるには、誰が適任であると思う？」

トール「父上、それはどういう意味ですか？」

手に持っていた報告書を渡され、中身を確認した。
父は使者と言ったが、内容的には使者などではなく、実質は人質だ。

トール「父上、どういう事ですか！ネーベルは何を考えて…………！！」

陛下「脅威と考えての事だろう。トールギス、この国が急激に成長した訳は？」

トール「それは、他国との貿易との繋がりが大きいでしょう。それに加え、ムーンパレスの食文化は、特に貴族達には好評です。尚且つ、他国にはない制度を取り入れた事で、人が集まってきております」

陛下「その礎は、誰だ？」

トール「それは…………！父上、Aを人質としてネーベルに行かせるおつもりですか！」

陛下「では聞こう！ A以外に適任はいるか？」

トール「……………………」

何も言えなかった。
自分ならと思ったが、国の後継者である自分を易々と外に出せるはずもない。それも、唯一の皇子なら尚更であろう。
なら、フィリーは？
病弱なため、本当の意味でお飾りの皇女だろう。だが、性格が少し難がある。あの性格では、フィリー自身にもネーベルとの関係が悪化するだろう。
フィオならどうだ？
フィリーと比べると穏やかで、兄妹の中でも性格はAに近い。
…………ダメだ。フィオはネーベルを良く思っていない。俺とAがネーベルへ行くたび、我慢を強いられる事も多く、何より自分達と同い年の皇女と皇子に慕われていることに不満を持っている。
ただ慕われているだけなら、そこまでではなかっただろうが、呼び方が姉を取られた風に受けたのだろう。

トール「……Aであれば、適任でしょう」

絞り出した言葉は、自分自身が一番望まない答えだった。