もう一人の転生者 1 (ページ15)

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皇女の思惑ページ15

A side

ローゼの部屋に入り、机に置かれていた本をおもむろに手に取った。
だがその本は、２才児が読むには難しいし、普通の２才児なら手をだすこともないだろう。
感じていた違和感が、確信に変わっていく。
少々無茶振りだったが、歌を歌うことを誘い輪唱した。

A「(申し訳ないですが、ローゼの記憶を見せて頂きましょう)」

歌に魔力をのせ、徐々にローゼの目が閉じていくのが判る。
規則正しい寝息が聞こえた所で、歌を紡ぐのは止めずに、ローゼの額に手を当てる。

A「(…………！！やはり、私と同じ転生者。この世界は彼女の中ではゲームの世界なのですね)つっ…………！」

同時に別々の魔法を使用するのは、今の身体にはかなりの負担がかかるらしい。
本音はもう少しローゼの記憶を探りたかったが、今度は魔法を使用せず、普通に歌を紡いだ。

・・・・・

トールギスside

ラーズが戻って来て、Aからの言伝てを聞いた。
今はクリスとラーズと一緒に妹姫の元へ向かう。レオンハルトは近衛の仕事があるらしく、二人と一緒に向かっているというわけだ。

トール「ラーズから見て、妹姫はどの様に写った？」

ラーズ「ローゼマリー皇女様は、クリストフ皇子様とは違い、表情は解りやすいです。それに行動力がありますね」

クリス「行動力？」

ラーズ「えぇ。ローゼマリー皇女様は、A皇女様にお会いしたくて部屋から出てきたようですよ？」

クリス「………………」

トール「どうした、クリス？」

クリス「いや、ローゼには話がいってないはずなのだが……。噂好きの侍女から聞いたのかもしれないな」

トール「まぁ、何処へ行っても女性は噂好きだな。それなら、妹姫の耳にしたのかもしれないな」

妹姫の部屋の近くまで来たとき、歌が聴こえてきた。

クリス「歌？」

トール「珍しいな、歌っているのか」

部屋の中に入ろうとしたが、流石に躊躇いがあり、クリスを先頭に部屋の中へ入った。
部屋の中には、ソファーに座り歌を歌っているAに、そのA膝で眠っている金髪の少女だった。
Aがこちらに気付き、歌を止めた。

A「先程ぶりですね」

Aは隠していたが、右腕が微かに震えていた。
それが意味するのは、魔法を使ったということだ。それも上位か、自分のキャパを越えた魔法を使用したことを物語っていた。