呪いの王の最愛の花嫁【両面宿儺】

捌話 ページ10

結は、酒に酔いながらも
生贄となった経緯を
悲しそうにずっと喋り続ける

貴｢だから、宿儺様に
好きに生きろって言われて
なんか、開放感が出たんですよ｣

悲しそうな表情だったのが
和らぎ、ふふっ、と結は小さく笑う

貴｢生きろって言葉が
“あぁ、私、生きてていいんだな”って
その言葉に救われたんです｣

ただ、俺が言った気まぐれの言葉に
そこまで思っていた事に、驚きを隠せずにいた

俺の一言で救われた…か
そんな言葉さえ言われたのも初めてだな

俺は、俺の膝で寝っ転がる結を
抱き上げては、背中に手を回す
そして、ゆっくりと撫でる

貴｢なんですか〜？｣

宿｢本当な泣きたいのであろう
なら、泣かせてやるから早くしろ
見られるのも嫌なのだろ｣

貴｢…ほんと、敵わないですね｣

小さく呟いた結は、鼻をすすり始める
そして、俺の肩は濡れ始める
俺は、赤ん坊をあやすかのように
結の背中を擦り続けた

貴｢…ありがとうございます｣

数分後、結は顔を上げて
俺の顔を見ては、笑う
その目は、真っ赤に染っていて、涙の跡も残っている
そんな結を見て、俺は、何故か
“綺麗”と思ってしまっていた

貴｢本当にお優しいですね。宿儺様は…｣

この俺が優しいか…
そんなことも言われたことがない
本当におかしな女だ

宿｢お前にだけだ｣

貴｢…え？｣

宿｢勘違いをするな
そこら辺の女などどうでも良い
お前だから俺は、そうしたいと思っただけだ｣

俺は、結から離れ
寝床へと戻ろうとすると
後ろから結に腕を回され抱きしめられる

宿｢…何をしている｣

貴｢わ、私もです｣

宿｢何がだ？｣

貴｢私、幼き頃から人の前では
絶対泣かないって決めてたんです
でも、宿儺様の前だから…
貴方と一緒にいると安心します｣

結の放った一言で、俺の体は、熱が篭もる
結の手も真っ赤になっていることに気がつく

後ろを振り向こうとすると
結は、俺の背中に回る

宿｢おい。顔を見せろ｣

貴｢今は、ちょっと…｣

俺は、勢いよく振り返るが
すばしっこい結は
諸共せずに背中に回る

宿｢往生際が悪いぞ！｣

貴｢あっ！｣

俺は、2本の腕で結の腕を掴み
もう2本で腰を持ち、その場にあげる
そして、ゆっくりと振り返る

結の顔は、真っ赤に染っており
目には、涙が浮かんでいた
そして、俺の顔を見ないように目をそらす

貴｢4本腕ずるいです…｣

宿｢言い逃れしようとするお前もな｣

俺は、結を自分に引き寄せ、抱きしめる

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