呪いの王の最愛の花嫁【両面宿儺】

漆話 ページ9

貴方side

私が産まれ育った村は
焼けて無くなった
燃え上がったはずであろう炎は多くの人を殺した
私の両親もその中の内だった

運良く私は、山の方へと
山菜などを取りに行っていた為
何とか助かることは出来た
戻ってきた頃には、何もかも燃え尽きていた

私は、自分の家へと走り
親の生存を確認しようとしたが
あるのは、崩れ落ちた木々と焼けた人の跡
私は、考えるのが怖くなってその場に伏せていた

でも、未だにあの光景と匂いは覚えている
荒れ果てた地に肉や木が焼けた匂い
鼻に残る匂いが忘れられない

涙を出し切った私は
行先も分からないまま足を進めた
そして、辿り着いた先が今の村だった

男｢おい、大丈夫か？｣

煤まみれの私を見た
一人のお坊さんが声をかけてきた
私は、首を横に振ることしか出来なかった

お坊さんは、私を家へと招き入れ
沢山の食べ物を食べさせてくれた
そして、事情を説明すると
“住む場所がないならここに住むがいい”
そう言ってくれた

私は、とても嬉しかった

それからというのも、
私は、色々なことを教えられる
寺の掃除や畑仕事、料理や織物
言われたことは難なくこなしてきた

そして、村の人達は
私の事を凄く可愛がってくれていた
それと同時にお坊さんの世話だけでもなく
村の人達の手伝いまでしていた

村の人達へ手伝いに回っていると
その時からだろうか。私は、違和感を覚え始めていた
この村には、若い女の人が少ないことだ

いると言ったとしても、数人
それと、申し訳ないけど、歳をとった人達ばかりだ
それか、私より小さい女の子達ぐらいだった

そして、恐ろしいことに
その小さい女の子達は、母親が居ないということ
疑問でしか無かった

そして、16歳という年齢になった私は
いつものように村の皆の手伝いをしに行く
でも、その日から日常が一変した

急にお坊さんに呼び出され
何を言い出すかと思えば
“この村の生贄となってくれ”と言って
村の人達に手足を押さえつけられる

騙された

私の頭の中はそれ一言であった
幼い頃からこの計画は仕込まれていたのだ…
もちろん、その時は、憎悪が湧いた
本当は、逃げ出そうかと思った
でも、それは一瞬でなくなった

手が震えている私をおさえつける人
お坊さんの目は、涙が浮かんでいた

貴｢分かりました｣

私は、ただその一言だけ発した

もし、幼い頃から仕込まれていた事だとしても
この人達は、私をここまで育ててくれた
生贄として役にたてるなら
それで構わない、とそう思った

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