呪いの王の最愛の花嫁【両面宿儺】

陸話 ページ8

貴｢宿儺様〜！｣

結は、山を必死に走って登り
俺の方へと手を挙げて走る
俺は、そんな結の姿に自然と笑みが出る

宿｢走るな。転けるぞ｣

貴｢宿儺様を見つけたら
走らずには居られませんでした！｣

出会った頃に比べると
結は、笑うようになった
今も眩しいぐらいの笑顔を見せる
そんな結に謎に心臓が高鳴る

宿｢ほんと、なんなんだ…｣

貴｢何がですか？｣

宿｢お前、魔術師か？｣

貴｢まじゅ、まじゅし？｣

意味が分からない結は
俺の言葉を深く考えては首を傾げる
そんな結に“気にするな”と言う

宿｢今日は、何を作ってくれるんだ？｣

貴｢今日は、佃煮です！｣

俺は、結が抱えていた
野菜というものをとり、屋敷の中へと運ぶ

なんか、今日はいつもより重いな
こやつ、こんな重いのを持って走ったのか…

俺は、カゴの中を漁ると
そこからは、一本の酒の瓶がでてきた

宿｢これは、どうした？｣

貴｢村の方々が宿儺様に
お召し物ということで頂いてきました｣

宿｢ほう｣

夜となり、結の飯も作り終わり
俺は、酒の瓶を開ける
そして、盃の方へと注ぎ、一気に飲む

宿｢これは、本当に変わらず美味いな｣

貴｢そんなに美味しいんですか？｣

後片付けをしながら
結は、俺の姿を見ては
楽しそうに微笑んでいる

宿｢これが生き甲斐でもあるようなもんだ
お前と飲んでみるか？｣

貴｢では…｣

結は、俺の横に座り
俺は、結の盃に酒をつぐ
結は、勢いで飲み始める

宿｢お、いける口か！
よいよい。もっと飲め飲め！｣

俺は、結に酒を注ぎ続ける
結は、一言を発さずにそのまま飲み続ける
俺も負けずと飲み続ける
いつも間にか酒の瓶は空になっていた

宿｢おい。大丈夫か？｣

貴｢らいじょうぶれすよ〜｣

酒が空になったと同時に
結は、顔を真っ赤にしては
俺の膝の方へと倒れ込む

宿｢いや、大丈夫ではないだろ｣

貴｢ふふっ。たのしいですね〜｣

俺の膝へと転がり込んだ結は、
満足気のようにして笑う
俺は、またそんな結の姿に胸を撃たれた

宿｢ほんと、なんなんだ…おい、水を飲め｣

俺は、立ち上がり結に器に注いだ水をやり
結は、それを一気に流し込むが
俺が座ると同時にまた膝へと倒れ込む

宿｢おい…離れんか｣

貴｢私、今。宿儺様のおかげで幸せなんですよ｣

結は、人の話すら聞かず
俺の膝に頭を乗せながら話を続けた
それは、結の小さい頃の話だ
その顔は、どことなく悲しい表情であった

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