呪いの王の最愛の花嫁【両面宿儺】

伍話 ページ7

あれから結は
毎日俺の宿に来ては
飯を作るようになった

それだけでは無い
洗い物や洗濯物、俺の身の回り
全てを完璧に結はこなす

宿｢まるで使用人みたいだな｣

貴｢宿儺様の使用人なんて光栄です｣

今日の天気の良い日
結が洗濯物の布を干している後ろから
横になりながら俺はそう言った

だが、結は、何を思ったのか分からんが
俺が嫌味で言ったはずの言葉を
諸共もせず、微笑みで返す

俺は、そんな結に
またため息が出てしまう

どれだけのお人好しだ…
こんなことをしても
お前に良い事などひとつもないだろう

俺は、ゆっくりと起き上がり
結から、布団を取る

貴｢え、やりますよ！｣

宿｢使用人の休息も主人の務めでもある
お前は、働きすぎだ。少しそこに座れ｣

貴｢でも…｣

宿｢往生際が悪い！早くしろ！｣

結は、“ありがとうございます”と言って
俺がさっき横になっていた所に座る

俺は、布団を4本の腕で引き伸ばし
パンッ、とでかい音を鳴らせる
すると、後ろから何故か拍手が聞こえた

貴｢す、凄いですね｣

宿｢なんだ。今更4本の腕に怖気付いたのか？｣

貴｢いえ、4本の腕も便利ですね
そんなに綺麗な音出ませんよ｣

何故か、真剣そうに俺の腕を見つめては
羨ましいそうに見続ける

4本の腕もこの2つの顔を見ても
そういう奴などいなかった

俺の姿を見たものは
醜い者を見るように見ていた

“化け物”

その言葉が似合う程であった

だが、この女。今なんといったか？
4本の腕も便利そうだと…ふざけるな
こんな面白い言葉などないぞ

宿｢フハッ…｣

貴｢え、｣

宿｢そうか。便利そうか！そうだな…
困ることは無いぞ
こんなことも出来るからな｣

貴｢わっ！｣

俺は、結を4本の腕で
持ち上げては、その驚いた顔に
また笑いがこみ上げてくる

俺が少しはしゃいでおると
結が急に黙り始め
俺は、何かと思い、結の顔を見ると
結の顔は、真っ赤に染っていた

宿｢なんだ。働きすぎて熱でも出たのか？｣

俺は、結の額に自分の額を合わせる

熱は…無さそうだな
なんでこんなに赤くなってんだ？

貴｢宿儺様…おろ、下ろして下さい｣

あぁ、なるほどな

宿｢断る｣

貴｢えぇ！｣

初めて会った時は、表情一つ変えなかった女が
今では、俺の腕の中で転々と表情が変わる
今のその表情は俺の中で1番のお気に入りだ

あぁ、本当に愛い奴め…

…愛い奴？何を言っているんだ？俺は…

俺は、自分が思ったことを未だに気づいていない

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