呪いの王の最愛の花嫁【両面宿儺】

弐拾参話 ページ27

宿｢結！結！｣

血の海に溺れていた結を
抱き上げては何度も名前を呼んだ
だが、結から返事などなかった
返事どころか息すらしていなかった

それは心のどこかで覚悟していたであろう
結の状態はあまりにも悲惨であった
腸は煮え繰り返され
それは、赤子を狙っているかのような殺され方だった
反転術式を使おうがやはり無理であった

宿｢…結。…天魔｣

よく見ると結の倒れていた木の近くに一冊の本があった
それは、毎晩結が書いていた本であった
本の中身は俺との日々の日誌だった

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本日は、宿儺様と料理をしました。
宿儺様がまさかの苦瓜嫌いとは思わず
その可愛さが本当に愛おしいです。
克服できるように村の人達から教えてもらおうかしら。

今日は雨の日。宿儺様は私を退屈させないよう
宿儺様の昔話を聞かせてくれました。
例え、沢山の人を殺めていようとも…
私は、どんな貴方でも愛してます。

満月の日。宿儺様と一緒に縁側で
子供の名前を決めました。
名前は天魔。早く会いたいです。

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そして、最後の紙には走り書きされたいた
逃げながら書いたのであろう
それは、俺宛への恋文であった

“宿儺様。愛してます。”

たった、一文。一文であったが
結がどれほど俺を思っていたのが伝わる

抱き抱えた結に、ぽたぽたと水が垂れる
俺の目から涙が流れていたからだ
それは止まることを知らず流れ続けた

宿｢…俺を置いて行くな。結｣

情けないな
昔の俺なら人が1人死のうがなんとも思わなかったが
今はこんなにも1人が怖いというのか…

？｢ひっ！｣

締め付けられたかのような悲鳴の声
その声の方へ目をやると
赤子を抱えた女がいた

女｢ば、化け物！｣

…ああ、そうか。
俺は何を勘違いしていんだ
結と過ごしているうちに麻痺していた
これが本来の俺だ

やはり、こんな心の澄んだ奴は
俺と関わること自体間違えであった
お前は、俺と一緒にいるべきではない

宿｢…だが、永遠にお前を愛しておるぞ。結｣

俺は、抱いていた結をゆっくり下ろし
本を手元に乗せてやり
目を閉じさせて接吻を落とす

…これは呪いだ
さあ、食事の時間だ
まずお前らからだ

まず、子供がいい
もう少しで手に入るはずだった
惜しいことをした

いや、先に女でもいい
奴らは勝手に子を孕る

俺は呪いの王
全てを塵殺して喰らうのだ

そこからの俺の記憶はなく
ただ時が流れていくのであった

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