呪いの王の最愛の花嫁【両面宿儺】

弐拾壱話 ページ25

貴方side

今日は天気が良いので
私は宿儺様に一言告げて
村の方へと足を運ぶ

宿儺様もなにかご用事があるようで
隣の山まで何かを取りに行くらしい
あまり出歩くことの無い宿儺様には珍しいことであった

貴｢天魔｣

私は自分のお腹を擦りながら
宿儺様と二人で決めた子の名前を呼ぶ
満月の夜、縁側で決めたのだ

名前に反応したのか
お腹の中から動いた感覚がした

貴｢ふふっ、もうすぐ会えるね｣

天魔と喋っているうちに
村の方へとたどり着いていた
私はいつものようにおじさん達に声をかけようとする

しかし、声をかけようとするが
村には誰一人見当たらなかった

貴｢…みんなどこに行ったのかしら？｣

私は、辺りを見渡しながら
いつも必ず向かう先のお寺の方へ向かった

貴｢こんにちは〜！お坊さん？｣

私の呼び掛けに中からゆっくりとお坊さんがでてきた
その表情は、少し不気味な表情をしていた

坊｢よく来たね。結｣

私の目を見ては、ゆっくりとお腹の方へと
目線を下ろし、ニヤリ、と笑う

貴｢村の人達が誰一人いらっしゃらないのですが
な、なにかご存知ですか？｣

私の声は、何故か震えていた
そして、私の本能が叫んでいる

坊｢あぁ、それはね…｣

“ここから逃げろ”って。

私は、その本能のままその場から逃げようとする
しかし、その瞬間肩に痛みを感じる
痛みが感じるところに手を当てると赤い液体が流れていた

貴｢…血？｣

男1｢お前、何をしてるんだ！｣

振り返ると、桑を持ったおじさんと
その後ろからはまた別の人が叫んでいた

貴｢…おじさん達？｣

男1｢しっかり、頭を狙わないか！｣

私は、その言葉に絶句した
あまりにも驚きすぎて言葉が出なかった
おじさん達の後ろから村の人達がぞろぞろと現れた

女1｢あんたのおかげで村は襲われなくなった｣

男2｢あまりにも若いのにあんな化け物と一緒は
可愛そうだと思っていたんだがな｣

女2｢でも、子を孕るなんて思わなかったわ
また、あれと同じ化け物が生まれるってことでしょ｣

貴｢ちがっ！宿儺様は…！｣

坊｢そうだ｣

私の言葉をお坊さんが遮り
私の背中を勢いよく押してきた
私はその勢いと出血のせいで立ちくらみもあり
その場に倒れ込んでしまう
無意識にお腹に傷つけないように抱え込む

男1｢やっぱりそうなんだ｣

女2｢…早めに殺しておけばよかった｣

貴｢…えっ？｣

男1｢情にかけたのが間違いだった｣

おじさんの一言にみんな納得して
私に刃物を向けてきた

だめ。殺される…

弐拾弐話→←弐拾話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す