呪いの王の最愛の花嫁【両面宿儺】

弐拾話 ページ24

あれから数ヶ月の時が経ち
結の腹はどんどんと膨らみ
赤子の成長を噛み締めていた

しかし、そんな身体なのに
日が落ちた今、結は家におらぬ

貴｢あっ、宿儺様〜！｣

こちらに笑顔を向け手を振り
背中に藁籠を背負いながら
ゆっくりと山道を歩いている

俺はつかさず、結の側へ行き
抱き抱えてすぐに家の中へと戻す

宿｢何度言えばわかる！
貴様、赤子を抱えておるのだぞ！
転んで怪我でもしたらどうする！｣

そんな俺が何度何度もキツく
同じことを叱っておるというのに
結は、何故か笑みを浮かべている
これは毎度のことだ

貴｢すみません…ついっ！｣

俺の視線に気づいたのか
結は、緩んだ頬を隠すかのように手を頬に当てる

宿｢何故、怒られておるのにいつも笑っておるのだ｣

貴｢いえ、愛されてるな。と思いまして｣

幸せそうに笑う結を見て
俺も頬が緩みそうになるが我慢をして表情を固める

宿｢毎晩あれ程、愛情を注いでやっているつもりだが
まだ足りぬというのか。困った花嫁だな｣

そう言うと、結は言葉を理解出来たのか
顔を真っ赤にしては俯き
ゆっくり俺の顔を見上げる

あまりの愛おしさ我慢ができず接吻を落としてしまう

貴｢すっ、宿儺様！？｣

まずい、あまりの愛おしさに話が脱線してしまう…
妻になって尚、俺を狂わせるなど大したものだ…

宿｢しかし、日が落ちてまで帰ってこなかったことは
さすがに俺も関心はしない
なぜ。こんなに遅くなった。何かあったのか？｣

貴｢すみません。山菜をつんでいる途中で
お坊さんと出会い、私のお腹の方を見て
赤子が出来たことを村の人達に報告してやれ、と
言われたもので…｣

宿｢そのままついて行ったのか？
なにかされなかったか？｣

貴｢いえ、逆に皆さん、おめでとう、と言ってくれて
こんなに、沢山の祝い物を頂きました｣

宿｢…そうか｣

貴｢ご心配をおかけして、本当にすみません｣

宿｢あぁ。…全くだ｣

俺は結を引き寄せて強く抱きしめる
結は、不安になっていた俺をあやすかのように
背中を優しく撫でていた

貴｢今日はせっかくの満月です
満月を見ながらでこのこの名前決めませんか？
村の人達から名前はなにかすごく聞かれたのですよ｣

宿｢あぁ、そうだな｣

貴｢この子もあと少しで産まれてくるそうです
村の一番腕のいいお医者様が言っていました｣

宿｢…早く会いたいものだな｣

貴｢えぇ、そうですね｣

俺は結の腹をさすり
結も優しく俺の手の上から撫でた

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