呪いの王の最愛の花嫁【両面宿儺】

拾肆話 ページ16

あの夜から一夜明け
今の空は、晴天に近い

結は、泣きながら
もう村には、物々交換のとき以外
寄りたくないらしい
原因となるのが、あの坊主だ

なにかよからぬ事を考えているのは
結と薄々と気づいている
それが怖いからなのか近寄りたくないとの事だ

あの坊主…
次に結に変なことを言おうものなら
真っ先に殺してやる
結の苦痛を味わえばいい

布団の中、俺の腕の中で
結は、気持ちよさそうに寝ている
だが、目は真っ赤な程、腫れている

それもそうか…
あんなに泣いていたのだからな
しかし、泣いていた理由が俺の為か…
俺にとっては、贅沢な涙だ

俺の為に泣いてくれる奴など
存在しないと思っていた
俺に向けて、泣くのは
恐怖か殺意ぐらいしかないと思っていた

宿｢…ありがとうな｣

俺は、結の目を
優しく撫でると結は
ゆっくりと目を開け始める

貴｢宿儺…様？｣

宿｢おはよう｣

貴｢おはようございます
すみません。あれから寝てしまったようで…
今、朝ご飯をお作りしますね｣

俺は、立ち上がろうとする
結を引き寄せては
自分の体に密着させる

貴｢どうされました？｣

宿｢まだ寝ておれ。俺もまだ寝足りん
毛布が一枚もないなど、俺の体が冷えるだろ｣

そう言うと、結は
俺の言いたいことが分かったのか
ふふっ、と小さく笑い
俺の背中に手を添える

貴｢それでは、私が精一杯
宿儺様を温めさせて頂きますね｣

宿｢それで良い｣

そう言うと、結は
再び目を瞑り始めては
俺の顔の方に近づき頬を擦り合わせる

貴｢宿儺様は、本当に温かいですね｣

宿｢…お前が温かいんだろ｣

貴｢いえ、私は違いますよ
宿儺様のおかげで温かいのです｣

その言葉を否定しようと思ったが、結の事だ
折れないのであろう…
だが、本当に温かいのはお前だ
お前が人という温かさを教えてくれたのだ…

宿｢結…。お前に言いたいことがある｣

俺は、結に呼びかけるが
結は、俺を抱きしめるが
少しも動作しない
耳をすませば、寝息が聞こえる

宿｢もう寝たのか。どれだけ昨日は疲れたんだ
いや、当然の事か…｣

なら、これを伝えるのは
明日にでもするか…
明日には、結にでも伝えるか

そろそろ結と出会って数ヶ月
お前のおかげで俺は、色んなことを知れた
この先もお前のことが必要だ
だから、俺の…妻になってくれ

俺と夫婦になれ

そう伝えると、結は
どんな反応をするのか
今考えるだけでも楽しみでしかない

宿｢早く、目を覚ませ｣

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