呪いの王の最愛の花嫁【両面宿儺】

拾弐話 ページ14

貴方side

私は、いつものように
食料調達の為に
山に山菜などを摂りに向かっていた

今晩は、宿儺様に
何を作って差し上げようかな〜

ゆっくりと足を運び
弾む心を楽しませるように
私の体は、音階を踏んでいた

そして、山菜などをたくさん摂ると
村の方へと下っていく

男1｢よぉ、結！｣

男2｢また山菜とか持ってきてくれたんか？｣

畑で稲を耕しているおじさん達に
私は、手を振っては山菜を置いていく

いつも、おじさん達は
宿儺様や私の為に、魚や猪の肉などをくれる
そのお返しの変わりに山菜をあげる
物々交換っと言ったところだ

本当は、山菜や茸などは
山に行けば採れるけれど
山に行けば、宿儺様に会ってしまうという理由で
恐ろしくて近づけないらしい

そんなに怖い人ではないんだけどな〜
むしろ、優しいし
私の事大事にしてくれる…

私は、この前あった
接吻の回想が頭にでてきて
熱が段々顔に集中していくのが分かる

坊｢熱でもあるのか？結｣

私は、寺の前で蹲っていると
後ろからお坊さんに声をかけられた
お坊さんは、私を見ては首を傾げていた

貴｢なんでもないですよ｣

坊｢しっかし、未だに信じられんな
あの、宿儺が人間を喰わなくなったなんてな
ご先祖様達がお聞きになられたら
嘸かし驚いては、腰を抜かすだろう｣

貴｢ふふっ。今じゃ私の作ったご飯を
美味しい、と言って食べてくれるんですよ｣

実際、言われたことはないですけどね…

私が笑っているとお坊さんは、険しい表情になる

坊｢お前も変わったな｣

貴｢私ですか？｣

坊｢本当は、私達のこと憎いだろ
だが、宿儺に出会ってからか
今では、憎悪が全く感じん｣

確かにそうだ…
あの時は、初めてこの村の人間を憎んだ
でも、今では、その事があったからこそ
今があると思っている

貴｢そうですね…
宿儺様のおかげで考えが変わりました｣

お坊さんは、私を見ては
何かを納得したかのように
首を縦に振り、口を開く

坊｢お前、宿儺と夫婦にでもなったのか？｣

貴｢め、夫婦！？｣

私は、驚きのあまり
山菜が手から滑り落ちる
それを慌ててお坊さんは掴む

坊｢冗談だ。冗談
あの、宿儺と夫婦だなんて誰が望むんだよ｣

大きな声で大笑いする
お坊さんに少し私は怒りを覚え
山菜を置いては、踵を返す

坊｢山菜ありがとうな〜｣

大笑いしながらもお坊さんは、お礼を言う
私は、何も言わずにその場を去る

私は、知らなかった
大笑いするお坊さんの笑みは
悪意に飲み込まれていたことを…

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