私の罪は何ですか？ (ページ2)

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……おかしい。

私はいま、怪物から必死に逃げている。

真っ暗な山道をである。

それなのに、何故だろうか。
誰かが助けてくれるか、この怪物から逃げ切るかして助かる未来が全く見えないのである。

重ね重ね思う。

おかしい。
私は生まれてこの方悪さをしたことなんか一度もないのに。

何故、怪物に追われるというお世辞にも良いとは言えない状況に置かれてもなお助かる見込みがないのか。
というか、そもそも何故こんな事になっているんだ。
悪い事をした覚えなど一度もないのに。

はて、こんな事になる程、私は一体どんな罪を犯したのだろうか。

……そろそろ足痛くなってきたし、疲れたし、家帰って寝たいし、誰でも良いから助けて欲しい。
それに、嫁入り前の娘が山道で襲われるだなんてよくない。
非常によくない。

日頃の運動不足が引き起こした結果である。
こんなことなら毎日ちゃんと外に出て陽の光を浴びる健康的な生活を送るべきだった。
なんなら、いくら夜型だからってこんな時間に外を出歩かなかったらよかった。
ちょっと野暮用があるからって、朝まで待ってたらよかった。
明るい時間帯だったらこんな事にならなかったかもしれないのに。

そんな事を思っていた時である。

突然怪物の頭らしきものがこちらに飛んできた。
一体なんだと後ろを振り返ると無表情の男が静かに立っていた。
刀を持っている。

「……」

一体どんな反応を返すのが正解なのだろうか。

その前に、この男は誰なのだろうか。
何しろ刀を持っているし喋らないので私を助けてくれたのか危害を加えるつもりなのか点で分からない。

というか、お願いだから何か喋って欲しい。
このままだと気まず過ぎて死ぬが、この異常事態に自分から言葉を発せられるほど私は強くはなかった。