記憶 ページ9
先生
、、、、
そうですか、、、
一ノ瀬さん
この病室の近くに
ナースステーションがあるのをご存知ですか？
先程、診察室から歩いてここまで来ましたよね
その時にあったのを覚えてますか？
はい、なんとなく
先生
ならそこまで一人で行ってきてください
これは診察です
一人で行けますか？
はい
先生
ゆっくりでいいです
時間がかかっても
ナースステーションまで歩いてここに帰ってくる
出来ますか？
はい、わかりました
先生
ナースステーションにいる
林というナースにこの紙を渡してください
これもお願いできますか？
はい、、、
先生
不安ですか？
紙に書きますか？
大丈夫です
先生
ならわたしが言ったことをもう一度
復唱してください
ここから出て
ナースステーションに向かう
ナースステーションに着いたら
林さんに紙を渡す
戻ってくる
先生
はい、正解です
では、行ってきてください
分からなくなったら誰かに聞いてください
はい
ガチャ
(主人公、部屋を出る)
先生
記憶が少し心配です
他の方はわかる
大野さんを認識できてない
記憶というものは不思議で
自分に深く関わった人の記憶が
一番に消えていく
奥さんの記憶の中で
大野さんの記憶が一番深い
そして濃い記憶となって残ってる
だから忘れてしまった
櫻井
子供たちを忘れたのは？
先生
大野さんとの子供だからです
彼女の中に
大野さん自身が消えると
その子供たちであるお子さんの記憶も
無かったことになる
例え子供たちにお会いしても
彼女にはわからないと思います
大切だから覚えておきたい
大切な思い出
記憶、、、
大切だからこそ想いが強い
それが仇となって記憶を失うんです
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作者名：帝
| 作成日時：2020年5月29日 14時
