【泡沫＿人類聖戦】贋造パレヱド (ページ2)

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2254年 ×月×日ノア・ロレンツォの日記

ウタカタ部隊に入隊して何ヶ月か経って、ようやくこの暮らしにも慣れてきた。

そして今日、ルイ隊長の部屋で一冊の本を見つけた。

戦闘員の彼女はいつも戦うことばかりを考えていて、文学を嗜(たしな)む人のようには見えなかったから、意外だ。

少し古びた表紙からパラパラめくる。

どうやらこれは小説などではなく、日記らしい。
とんでもないものを見てしまったような気がして、罪悪感。

これがバレたら大目玉を食らう。

すぐに元あった場所に戻そうとしたが、気になるページを見つけてしまった。

弟さんのことが書いてある。

イリス・アストライア。
四年前、魔物が海底都市に侵入してきたときに亡くなった、ルイ隊長の実の弟さんだ。

しかもこれ…2250年魔物襲来の前日の日記だ…。

"学者の父に似て賢く、好奇心旺盛"…。か。

ルイ隊長はあまり自分のことはおろか家族のことも語らないから、初めて知ることばかり。

"イリスは頭が良い。

姉の私よりずっとずっと大人に見える。

母も父も姉弟(してい)差別はしない人だけど、私はどうしても劣等感を感じてしまっていた。

深く考え込んでしまう前に寝よう。"

多分、ここ最近で一番びっくりしたと思う。

あの隊長が、無表情な隊長が、こんなことを思っていたなんて。

劣等感なんて感じない人だと思っていた。

だって戦闘のときもとても強いし、作戦もオペレーターたちと話し合える人だから。

隊長の日記はここから数ページ破いてあった。

飛んだ先の日記の内容が酷く重いもので、
僕はお腹いっぱいになって元の場所に戻し、何事もなかったかのように振る舞った。

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齟齬(そご)

意味：食い違うこと。