最低な婚約者3【JN】

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『あ…』










その言葉…
まだ出会ったばかりの頃、
テヒョン君の話をした時の…。











「ずっと想い続けてた。この一ヶ月、君が頭から離れた瞬間なんて、一秒たりともなかった」











まだ正常に頭が働いてないのに。
ソクジンさんの言葉がどんどん私の心を乱してく。








スーツケースを握る手が、
震えてる。











『…もうッ…何も言わないでくださいッ』










涙で視界が滲んだ。
もう、我慢ができなかった。










「うん」












『私達ッ…話し合いも…出来なかったしッ』












「うん」











『ソクジンさん…何も…話してもくれなかったしッ』












「そうだね」














『婚約者って言っても、名ばかりだったんだってッ』












「…」











『悲しくて…ッ…私…ッ』













やだ。いい大人の癖して。









自分のことを棚に上げて
こんな恨み言ばかり。









ソクジンさんが悪いわけじゃないのに。









「うん。それから?」








なのに。







相変わらず可愛くないことしか言えない私を
相変わらず愛しそうに見つめてる。














「もっと話して。君のこと。僕に教えて?」










　

『嫌です!私、ソクジンさんのこと忘れるって決めたんですからッ』












だから。









『だから…ッ』









もうそうやって、
構わないで。









私を翻弄しないで…。









せっかく蓋をしたのに。










好きな気持ちが、
溢れてしまうから。






　





「…僕を忘れたい?」












このまま走り去れば良いだけなのに
高貴で、有無を言わせない、
サディスティックな瞳が
それを許さない。














「駄目だよ、そんなの」













大きな右手が私の頬を包んで、
無理矢理目線を合わせられる。











『や…ッ』












「アメリカにも行かせないし、君に彼氏がいるならこのまま奪い去るつもりだけど、いい?まぁ、嫌と言われたところでそうするんだけど」















『な、なんでそんな…自分勝手なことばかり!』













「なにを今更」












妖艶に微笑んで、
今度は両手で頬を包んで…











『んッ…!』












深く、深くキスされて。













「僕は欲しい物は全て手に入れるし、逆にそのためなら全てを手放しても構わない。覚えておいて?」

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