最低な婚約者3【JN】

再会っぷり×You ページ11

飛行機の小さな小さな窓から、
ぼんやりと滑走路を見る。









皆からもらった寄せ書きを読んでいると、
少し感傷的になってしまって、
なんとなく故郷の大地を目に焼き付けたくなったから。














「せっ先輩ッ!!嘘ですよね嘘だと言ってくださいよ!!!私も連れてってくださいッ!!!やだぁぁあああ!」











最後の最後まで駄々をこねて別れを惜しんでくれた
可愛いヨヌちゃん。










それから。






　




「このまま帰ってこないとか、ないよな?」











相変わらず表情はクールだけど、
ぎゅっと私の手を掴んだユンギ。










『なぁに、寂しいのー?笑』












わざと茶化してそう言ったのに、











「寂しい」














『え』












「寂しいに決まってンだろ」











ユンギが至って真面目にそう言ったから、
慌てて目をそらして、ゴニョゴニョと
ありがとうを伝えることしかできなかった。









今度韓国に戻れるのがいつになるのか、
私も分からないけど…
その時にはご飯に行こうねって、
ユンギと握手して別れた。









まだ何か言いたげなユンギの言葉を
聞く勇気は私には無かったんだ。










イヤホンをして、
わざと明るい洋楽を聞いて、
胸に詰まったたくさんの感情から
目を背ける。









うん。
これで良かったんだ。










この一ヶ月、
ソクジンさんを忘れたことは
一秒たりともなかったけど。








このままダラダラと幸せな思い出を引きずるより、
新天地でイチからスタートした方が
きっと前向きでいられる。
ふっきれる。










ソクジンさんの結婚のニュースも見なくて済むし、
歩いた街並みも、
喧嘩しながらご飯を食べたあのお店も、
遊びに来てくれたあのマンションも、
全部全部、時間がただの記憶に変えてくれる。











ソクジンさん。
誤解は解けなかったど。








もしまたいつか、どこかで会える日が来たら、
その時には笑って話せるように…









あ。
そもそも住む世界が違うからもう会うこともないのか。










また少し胸が痛んで、
涙を飲み込むように時計をみると、
離陸の予定をとうに過ぎていた。














『…?』









どこからか怒号が聞こえてくる。









なんだろう。
喧嘩?








左耳のイヤホンを外す。











「一体何分待たせるんだ!」











「早く飛べよ!」

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す