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「行方不明、ねぇ……」

 あの後、第二第三の失踪者の家を訪ね、話を聞いた。空が暗くなってしまったのでそこで家を訪ねるのは終わりにし、一端本部に戻り聞いた話を整理していく。

 五人の失踪者は全員友人関係にあり、付き合いも長く、よく外で遊んでいたらしい。そのときに何かの怪異に巻き込まれ失踪したのでは、と柚は睨んだ。

「隠強、匂いはなかったの?」
 後ろの壁に背を預けて立つ隠強に問うた。

「壱番目はな。けど弐番目はちぃと妙な匂いがしたぜ」
「どんな?」
「腐敗臭だ」
「腐敗? いつから? 何の?」
 思わず振り向く。隠強は心底楽しそうにしていた。

「ありゃ人間だ。弐番目の家の二階からな。けど最近のもんじゃねェ」
「最近じゃないって、いつ」
「さァな」
 柚の疑問に対する応えを濁した。
 ニタニタと、鋭く白い八重歯を見せて笑う。窓から差し込む夕日の色と相まって、その様が不気味に思えた。

「他は」
「……特にねェな」
「そう」
 人の腐敗臭。その条件を満たす怪異はなんだろうか。中国には人の死体を妖にする術があるというが……それをわざわざこちらに持ち込んでどうするというのだろう。そんなことになればただ面倒なだけだ。メリットなどない。
 山姥やその他の人を喰う妖からするのは濃い血の匂いで、腐敗臭ではない。
 犯人は人か妖か。人ならば主従の契約か、そうでなくても協力する妖がいるだろう。目撃情報もなく五人を浚うのは、無理がある。それに五人の中には妖の子だっていたのだ。人が浚うのは、術か何かの心得でも無い限り、不可能に近い。
 だから、妖の類いしかありえないのだ。

「柚」
「何」
 物思いにふける間に、日はすっかり落ちて、窓の外の暗闇に家から漏れる灯りやネオンが映えている。カレンダーを見れば今日は丁度新月のようだった。

「匂う、匂うぜ。弐番目の家で嗅いだあのくせェ匂いが」
「出たか!」
 獲物を持ち半ばドアを蹴り開けるようにして外へ飛び出す。新月とは、またやっかいだ。

「場所は」
「大通りから外れた住宅街の裏道だ。……一人、妖が追われてやがる」
 その道はここからそう遠くもなく、その道に入るための角から一人、黄土色の髪の少女が飛び出してくるのが見えた。
 それを追って、黒い霧のような靄のようなものが少女を捉えんと手を形作り、伸ばす。

「命令だ、二人を逃がせ隠強!」
「へーへー、わかッてらァ」
 柚は腰の刀を抜き、靄を切り裂いた。

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十二月三十一日(プロフ) - 申請ありがとうございます。承認致しました事をここにご報告させて頂きます。 (2017年2月28日 16時) (レス) id: 93adcc51ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:睡眠不足 | 作者ホームページ:9  
作成日時:2017年2月28日 1時

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