参 ページ4
「行方不明、ねぇ……」
あの後、第二第三の失踪者の家を訪ね、話を聞いた。空が暗くなってしまったのでそこで家を訪ねるのは終わりにし、一端本部に戻り聞いた話を整理していく。
五人の失踪者は全員友人関係にあり、付き合いも長く、よく外で遊んでいたらしい。そのときに何かの怪異に巻き込まれ失踪したのでは、と柚は睨んだ。
「隠強、匂いはなかったの?」
後ろの壁に背を預けて立つ隠強に問うた。
「壱番目はな。けど弐番目はちぃと妙な匂いがしたぜ」
「どんな?」
「腐敗臭だ」
「腐敗? いつから? 何の?」
思わず振り向く。隠強は心底楽しそうにしていた。
「ありゃ人間だ。弐番目の家の二階からな。けど最近のもんじゃねェ」
「最近じゃないって、いつ」
「さァな」
柚の疑問に対する応えを濁した。
ニタニタと、鋭く白い八重歯を見せて笑う。窓から差し込む夕日の色と相まって、その様が不気味に思えた。
「他は」
「……特にねェな」
「そう」
人の腐敗臭。その条件を満たす怪異はなんだろうか。中国には人の死体を妖にする術があるというが……それをわざわざこちらに持ち込んでどうするというのだろう。そんなことになればただ面倒なだけだ。メリットなどない。
山姥やその他の人を喰う妖からするのは濃い血の匂いで、腐敗臭ではない。
犯人は人か妖か。人ならば主従の契約か、そうでなくても協力する妖がいるだろう。目撃情報もなく五人を浚うのは、無理がある。それに五人の中には妖の子だっていたのだ。人が浚うのは、術か何かの心得でも無い限り、不可能に近い。
だから、妖の類いしかありえないのだ。
「柚」
「何」
物思いにふける間に、日はすっかり落ちて、窓の外の暗闇に家から漏れる灯りやネオンが映えている。カレンダーを見れば今日は丁度新月のようだった。
「匂う、匂うぜ。弐番目の家で嗅いだあのくせェ匂いが」
「出たか!」
獲物を持ち半ばドアを蹴り開けるようにして外へ飛び出す。新月とは、またやっかいだ。
「場所は」
「大通りから外れた住宅街の裏道だ。……一人、妖が追われてやがる」
その道はここからそう遠くもなく、その道に入るための角から一人、黄土色の髪の少女が飛び出してくるのが見えた。
それを追って、黒い霧のような靄のようなものが少女を捉えんと手を形作り、伸ばす。
「命令だ、二人を逃がせ隠強!」
「へーへー、わかッてらァ」
柚は腰の刀を抜き、靄を切り裂いた。
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十二月三十一日(プロフ) - 申請ありがとうございます。承認致しました事をここにご報告させて頂きます。 (2017年2月28日 16時) (レス) id: 93adcc51ae (このIDを非表示/違反報告)
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